Scramble LOVER -夜半の約束3

149 ページ49

“俺の我儘に、
　 付き合ってくれる？”


「…付き合うもなにも、仕事だから」

「ははっ、だよな」



その瞳が揺れて
その顔が安心したように笑うのは

その合図。



隆二の顔が近づいて
隆二の唇が近づいて



「だめ、リップ」



寸前の所で動きを止めた隆二が
舌打ちをしながらわざとらしく拗ねている。


だったらと言って頬にキスをされて

それが子供の頃の隆二みたいで

妙に照れくさかった。







撮影は二時間程掛かった。

でも体感、
あっという間だった気がした。

カメラマンが小林さんだったという事もあるし
なにより、隆二と一緒だったから。




「やべー、マジで綺麗」




撮影を終え、
二人きりになったチャペルの祭壇で

色んな角度からスマホを私に向け続ける隆二。




「なぁ、やっぱり式挙げない？
　ドレス自分で選びたいだろ？」

「んー、でもこのドレス素敵よね」

「まぁ…、Aなら何でも似合うんだけどさ」




スマホを仕舞った隆二が次に顔を上げた時

その表情に、一瞬で惹き込まれた。



真剣なその眼が、私を縛る。

祭壇前の階段を
一歩ずつ、ゆっくりと登るその姿。


呼吸に、心地よい緊張が走った。




「A…」



ドレスの裾にまた、
隆二の足元がふわりと埋まって

そして左手を、そっと持ち上げられた。




「愛してる。
　生まれて来てくれてありがとう」




恋人になってから知った事だけど
案外隆二はロマンチストで

決める所は確実に決めて来て
その度に私は、隆二に恋をしてしまう。




「こちらこそ。私も愛してる」




ここは、聖なる領域だ。

穏やかに微笑んだ隆二が
私の薬指に、丁寧なキスを落とした。




「病める時も健やかなる時も
　俺がずっとAの傍に居る。
　命を懸けて、Aを愛し守る事を誓います」




いつもより少しだけ低いその声が
静粛なチャペルに響いている。




「病める時も健やかなる時も…
　私もずっと、…隆二の傍に居る。
　命を懸けて、隆二を愛し支える事を誓います」




精一杯、声を絞り出した。



その瞳が揺れて
その顔が安心したように笑って

隆二の顔が近づいて
隆二の唇が近づいて




永遠の、愛を。








「…泣き虫」



子どもの頃から何度も言われて来たその言葉が

ここで聞いたせいなのか、
愛の言葉に聞こえた。



「…泣き虫の私も好きでしょ？」

「まぁな」






Scramble LOVER-夜半の約束
ALL END.

　

Ending Message By SORA→←148

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す