Scramble LOVER -夜半の約束3

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チャペルの建設は順調に進み
来週には引き渡しが行われる。


隆二は今日、専門誌の取材を受けていて
その様子を遠くから眺めていた。





「Aさん、そろそろお願いします」



岩田に呼ばれ、向かった控室。

そこに飾られている純白のドレスに
心が戸惑っていた。


今日はこの後、
広告用の写真撮影を予定していて

ただ、依頼していたモデルが
体調不良で来られなくなってしまい、

用意していたタキシードとドレスのサイズの都合で

急遽、広臣と私が代役を務める事になった。




ドレスに着替え、ヘアメイクも終わり、

鏡の中に居るドレス姿の自分に
心が戸惑っている。

こんなに冴えない表情の花嫁が
世の中にそういるだろうか。



「失礼します。そろそろ移動…うーわ、やば。
　めっちゃ綺麗じゃん」



呼びに来た岩田に、苦笑いをするしかなかった。



「なに？どうした？」
「…なんか、変な気分」



そう言った私を、岩田は鼻で笑った。


言いたい事は分る。
これだって仕事だ。

サイズが合う人間が内輪に居ただけでも
幸運だと思うべきで

でも、この期に及んでモヤモヤしている胸の内が
多分岩田にはバレているんだろう。



「諦めろ？新郎(・・)、外で待ってるよ」



得意げに笑いながら左手を差し出されて
溜め息を付きながら仕方なくその手に掴って

絡まるドレスの足元に気を配りながら控室を出たら




「……え」




隆二が、居た。





なんで？
なんでタキシード着てるの？





私を見つめながら穏やかに微笑んでいる隆二に

岩田は頭を下げて、
その姿が視界から消えた。




「…隆、二？」




廊下に響いた自分の声。

状況が、理解出来ない。



その割にはどきどきしていて

歩み寄る隆二に
吸い込まれるように見惚れてしまっている。




「マジ綺麗。綺麗だよ、A」




差し出されたブーケは白い薔薇のブーケだった。


思わず受け取ってしまったし、
タキシード姿の隆二が相当かっこいいし、


でも待って。

本気で意味が分らない。




「…なんで？どういう事？」




ドレスの裾に
隆二の足元がふわりと埋まった。


腰に腕を廻されて
愛おしそうに見つめられて


あぁ、ダメだ。

仕事なのに
本当の式に向かうみたいな気分になってしまっている。


　

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