135 After Story side you ページ35
所長のお陰で
無事に家に辿り着き
先に着替え終わった隆二が
ソファーに座ってスマホを眺めながら
鼻歌を歌っている。
ご機嫌なその様子に
気付いたら私の頬も緩んでいた。
最後の仕上げにリップを引いていた時
その鼻歌が近づいて来て
鏡越しに視線が重なった。
「…ほんっと綺麗な、おまえ」
それを言うなら、隆二の方だ。
隆二の容姿を評価するタイミングなんて
幼馴染の頃には無かったのに
恋人になってからはその立ち姿ですら
魅力的に映って見える。
分かり易く言えば
かっこいいと、そう思っている。
「…奢らないわよ?今日は私の退職祝なんだから」
だから、なんで私は素直に言えないんだろう。
それでも嬉しそうに私を包んだ隆二が
愛おしくて堪らないのに。
「だめ。リップ取れちゃう」
「…チッ」
隆二は私を、生きる意味だと言ってくれたけど
まさに今、私もそう思っている。
“頑張ってみる?二人で”
あれから一年。
違う言い方をするなら、
プロポーズを断ってから一年。
この一年で、状況が色々変わった。
幼馴染から恋人になったのは勿論、
同棲を始めて、
私は仕事を辞めて、
次の春を迎える頃、隆二は自分の事務所を持つ。
“A、結婚、しようか”
だから、それはもう少し先になるのかもしれない。
恋人になってから覗くその未来は
甘くて、
穏やかで、
充実していて、
早くその時が来ないかと今更思ったりもしていて
でも、一年前とは状況が変わったからこそ
多分今は時期じゃないと
身勝手に気を落としたりもしていた。
「お待ちしておりました。今市様、桜木様」
今日の食事は
プロジェクト案件だったホテルに構えている和食処で
料理長に会うのは
オープニングイベント以来の事。
懐かしい再会に
あの頃の感情を思い出しながら
この季節限定のフグ料理を堪能した。
てっさ、てっちり、から揚げ、雑炊。
「なんか、贅沢ね」
二週間前、
退職を目前にセンチメンタルになっていた私に
隆二が退職祝をしようと言って
ここを予約してくれた。
「Aの実績には見合わないけどな」
辛口の日本酒が、感動の喉を焼く。
「…ありがと」
「ははっ、レアだね、素直なA」
茶化す様なその口ぶりは
多分、ハグの代わりだろう。
零れそうになった涙が、不思議と消えた。
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ユキ(プロフ) - 空さん» 完結お疲れ様でしたまた次回作も楽しみにしてます😉♥️ (2023年1月28日 1時) (レス) id: e86d7cf610 (このIDを非表示/違反報告)
kota(プロフ) - 空さん、また一つ素敵な作品の完結おめでとうございます✨こちらこそ毎回コメントにレスをしてもらって嬉しかったです。臣、隆二、岩田と読むたびに心が傾き三人三様を堪能できました。もう一度はじめから読み返します😌片想い日記anserも楽しんで読んでます。 (2023年1月27日 22時) (レス) @page50 id: b7bba7af23 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - kotaさん» 完結しました!kotaさんの感想を沢山聞けて本気で嬉しかったです!ALL LOVE!お付き合い頂いて本当にありがとうございました!! (2023年1月27日 8時) (レス) id: 3e00d8d8fe (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ユキさん» 機会が合えばですかね^^;完結しました!お付き合い頂いてありがとうございました! (2023年1月27日 8時) (レス) id: 3e00d8d8fe (このIDを非表示/違反報告)
kota(プロフ) - ALL LOVE😍まさに皆の愛に包まれてWedding🔔 サプライズ❤ (2023年1月24日 21時) (レス) @page47 id: b7bba7af23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空 | 作成日時:2022年12月5日 15時