Scramble LOVER -夜半の約束3

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隆二が正装している時点で
薄々勘付いてはいたけど

連れて来られたのはフレンチのレストラン。




「乾杯」



良質な音を奏でたグラス。


シャンパンを傾ける隆二が
どう頑張っても艶っぽく映って

気を抜くと、見とれてしまいそうになる。


シャンパンが辛口で助かった。


これが甘口だったら
その甘さに翻弄されてしまったかもしれない。



「仕事の状況読めなかったから
　約束出来なかったんだけど
　予約だけはしといたんだよね」



素直に喜べばいいモノを
隆二の無駄な艶が、私を強がらせていた。



「言ってくれれば良かったのに。
　予定入れちゃってたらどうしてたのよ」

「だからさらいに行ったんだよ。
　Aのイヴを奪いにね」



……。



ダメだ。
嬉しい。




「え、もしかしてマジで予定あった？」
「…あった」
「…マジ、か」




期待通りの表情を浮かべている。
隆二の脳内が手に取るように読めていた。


私に予定があった事にがっかりして

その予定が、何かよからぬ予定だと想像して

少しだけイラついて
それを必死で否定しているような

その証拠に、首をふるふるとさせている。





「チキン、焼く予定だったの」

「………チキン？」

「シャンパンも奮発したから
　チーズフォンデュもしようと思ってて」

「マジかよ、Aの飯が良かったー」





背もたれに息を抜き、
その表情から分かり易く霧が晴れて行く。

こんな高そうなお店でよくそんな事が言えるわよ。


……。


だから。
素直に喜べばいいのに。




「明日じゃダメ？明日食わせて」
「…明日はローストビーフ」

「チキンも焼いてよ」
「…考えとく」





きっと私はチキンも焼く。



ほろ酔いの頬にイヴの夜風が心地よく感じた。




腕を絡めながら街路樹のイルミネーションを堪能して、

写真も何枚か撮って、

帰宅したのが22時。


鍵を開けながらクリスマスソングを口ずさんでいるご機嫌な隆二とくすくす笑い合って

歌声をBGMに開けたリビングの扉。



「え…」



驚いた。



窓際に、今朝までは無かった大きなクリスマスツリーが飾られてある。


その足元にはいくつかのプレゼントが置いてあって

ツリーの電飾が
プレゼントの包みをちらちらと照らしていた。




「…隆二？」

「サプライズ、成功？」




　

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