Scramble LOVER -夜半の約束3

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　“A、結婚、しようか”



「んー、ちょっと違くない？」

「……は？」

「さっきのドラマの俳優さんのマネでしょ？
　絶妙に似てないよ」







「…だったら、何で泣いてんの？」










今日一日、ずっと考えていた。

Aと過ごしながら
Aの事をずっと考えていた。



だから、ドラマなんて全く観ていない。

それどころか背景にすら至っていない。




「A」



キッチンに戻ろうとするAの腕を咄嗟に掴み
引き戻した行動こそが
焦りの象徴だったのかもしれない。




「冗談じゃないって事くらい解ってるよな？」
「……」

「A」
「……」




耐久戦を覚悟した。


昔からAは
言いたい事を飲み込む癖がある。

だから、Aが口を開くのを待つ事なんて
慣れたものだ。

待つ時間だって苦痛ではない。

ずっとそうして来たし、
それが俺の役割だから。




「……隆二」




しばしの沈黙の後、Aがその口を開いた。




「…私たち、幼馴染よね？
　私、隆二の幼馴染よね？」




沈黙ののちに繰り返されるその言葉。



幼馴染。



それが、Aの答え。






「…そう、だな」






本当の絶望は、この瞬間だった。





俺たちが幼馴染でなければ
違う結末が待っていただろうか。


俺がAの幼馴染でなければ

それでも俺は、
Aに巡り逢う事が出来ただろうか。





「…私、幼馴染の隆二しか知らないんだよ？」




Aの言い分も最もだと
今更感じている。


確かにそうだったのかもしれない。


お互いがお互いを知り尽くしていると言いながら

結局俺は
Aの表面しか見ていなかったのかもしれない。




「…悪い」

「そうじゃなくて！
　私、隆二の彼女になった事ないんだよ？」


「…………A？」



「私の初恋、隆二なんだよ？」



　
　

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