Scramble LOVER -夜半の約束

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週明け。


今日からプロジェクトが始動する。




今回のプロジェクトは
当社が回収したホテルのリニューアルイベントまでの一連業務で、

田崎エイジェンシーとは
客室以外の1階から3階のリニューアルを
手掛ける事になっている。

企画発案者の登坂さんは
自動的にチームマネージャーに就任する運びだ。





始業時刻の15分前。



亜樹さんと談笑しながらフロアに姿を見せたAは

俺を見つけ、表情を緩めた。




コンペの日はパンツスーツにピンヒールだった。

Aなりの武装だったんだろうけど

だったら何で、今日はスカートなんだよ。




「…？」



本人はそんなのどこ吹く風。
頭に疑問符を浮かべるその顔まで魅惑的だ。

いい感じに逆撫でてくれるよね、俺の独占欲。



ちょっと虐めてやろうと席を立とうとした時、
先輩に声を掛けられた。



「おい岩田、お前、
　女豹にどうやって取り入ったの？」

「取り入ったつもりないっすけど」

「なんだよ、無自覚かよ。さすが子犬。
　お前だけじゃねーの？女豹が気ぃ許してる男」




案外俺も単純だった。

その後亜樹さんに、Aをよろしくと頼まれ、
相当気分が良い。





「岩田、入構証(パス)届いてる？」
「はい。届いてます」
「そう。じゃあ行きましょ」




エレベーターの下りボタンを押すその指が
今日は震えていない。

彼に会わせるのが惜しくなって来た。




「A、今夜ウチ来いよ」
「ちょっと。メールで言って」
「誰も聞いてねぇよ」





ロビーで待ち構えるAの青春(あお)。




「おはようございます。
　入構証出来たので、次回から使って下さい」

「ありがとうAさん」




Aは林さんに営業スマイルだし、

コイツはコイツでAしか見てねーし。




「登坂さん、どうぞ」
「…ありがとうございます」




気付いてんだろ？

あの日、Aをさらった男が俺だって。




　“大丈夫。俺に任せて下さい”


　“ご紹介します。こちら、
　 今回私の補佐として入ります岩田です”




あの時の眼。
地団太を踏む敗者の眼。

最高でしたよ、登坂さん。




でも誤解しないで下さいね？




確かに毒見はさせてもらってますけど、

俺は、ただの傍観者ですから。


　

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