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柔らかく上がった口角と

この上なく優しい瞳。




一瞬の事だった。




視線が離れる数秒が
まさにスローモーションのように見えて

どことなく物憂げなその横顔に


心を全部持って行かれそうになっている。






隣を歩く林さんが何かを話し掛け、
笑顔で応えた広臣。

そして林さんは、

広臣の背中を寛大な笑顔でポンと叩く。




「……」




解ってる。

林さんが
広臣のプレゼンを称えているという事くらい。







「Aさん、戻りますよ」






広臣の仕事姿を見たのは今日が初めてだった。


そのスーツも初めて見たし、
髪色が変わっていた。


少し痩せたかもしれない。


大丈夫?

ちゃんと寝てる?
ちゃんと食べてる?




 “Aのオムライスが食べたい”




不覚にも、不用意な事を思い出してしまった。





「Aさん?」
「…ん?」

「戻りますよ」
「…うん」





辛うじて敬語を使っているものの、
岩田の顔からは、子犬の仮面が消えていた。

サディストな、あの眼。




 “俺に抱かれるときは俺に集中しろ”

 “俺以外の事を考えるな。
  俺だけ見て。俺だけ感じて。いいね?”




全部見透かされている。


そう思ったら
図らずとも心が引き締まる。


だけど、
エレベーターの扉を抑えながら私を促す岩田が

今度は牧師の顔になった。




 “大丈夫。俺が居る”
 “しんどくなっても俺が必ず癒す”
 “大丈夫。Aの心は強くなってるから”




ねぇ岩田。

もしかして私を操ってる?


サディスティックなあの言葉はもしかして、

戦地に踏み込む私の為だった?




「……」




なんて。




まさかね。

そんな訳ない。




腹黒の子犬よ?
単なる独裁者よ?



 “所有権、当分俺ね”



岩田は私の状況を楽しんでるだけ。
私で遊んでいるだけ。




 “その眼、ムカつくんだけど”
 “過去に囚われる眼”




でも、せめて教えて。

私の眼、どんな眼だった?




 “なってみろよ、本物の女豹に”




ちゃんとしてた?
ちゃんと出来てた?




「ん?どうした?」

「…ううん」










エレベーターが動き出した時、岩田が言った。






「大丈夫。完璧なサラリーマンでした」






また得意げに笑んだその顔に






「……ありがとう」






心からそう思った。



 

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設定タグ:登坂広臣 , 今市隆二 , 岩田剛典   
作品ジャンル:恋愛
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(プロフ) - ユキさん» 遅くなってすみません( ;∀;)ミニタオル、良かったですね! (2022年9月1日 18時) (レス) id: 3e00d8d8fe (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ねーやんさん» 遅くなりました^^;移行準備が整いましたので公開しました!お暇なときにまた読んで頂けると嬉しいです! (2022年9月1日 18時) (レス) id: 3e00d8d8fe (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 空さん» TAKAHIROさんと世界君とテツヤさんとミニタオル無事に買えました😄♥️ (2022年8月2日 7時) (レス) id: e86d7cf610 (このIDを非表示/違反報告)
ねーやん(プロフ) - 臣の思う壺😂やっぱ岩田じゃ満たされません笑移行楽しみに待ってます😊 (2022年8月1日 17時) (レス) @page49 id: 5188de096f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ユキさん» お目当ての物GET出来ましたか? (2022年8月1日 10時) (レス) id: 3e00d8d8fe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年6月25日 21時

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