Scramble LOVER -夜半の約束

029　side I：デザート ページ29

今日は職場の懇親会があり
Aは苦痛らしいけど

こういう場は俺にとって
有益な情報を仕入れる事が出来る貴重な場だ。


一時間程経った頃、
席を立ったAを追う灘本さんを見つけ

面白そうだと更にその後を追ったら

命知らずの彼は
女豹を口説いていた。





「お断りします」
「固い事言うなよ。満足させてやるから」

「五感全てが満たされなければ
　私は満足出来ません」

「だったら尚更、試してみない？」

「…説明不足でしたね。
　私今、視覚と聴覚が急速に萎えたんです。
　なので、至らないという意味です」



最高。
さすが女豹。



「…桜木、調子に乗らない方がいいぞ」



おいおい、苦し紛れの逆切れか？

憤慨した様子の灘本さんが拳を握り
流石にそれは、俺の大事な子猫に何をしてくれると
割って入ろうとしたその時。



「岩田君、ちょっといいかな」



声を掛けられたのは秘書課の女。
告白されたのは、…いつだった？


　“岩田君、私と付き合って下さい”
　“君の気持ち、ちゃんと知りたいな”


喜劇の続きを確認したら
役者は既にそこにはおらず

会場に戻る女豹の後ろ姿を確認出来た。



「なに？どうしたの？」



タイミング悪いよね。

俺は君じゃなくてAで遊びたかったのに。










「……どういう事？
　俺を好きだって言ったのは嘘？」

「違うの、私…」

「だったらなんで専務と寝たの？」

「どうしても岩田君の力になりたくて」

「……ショックだよ。君を信じてたのに…」




はい、お疲れ様。

それにしても君、
もう少し頭のいい女だと思ったんだけどな。




でも。
面白い情報を仕入れた。






「秘書課の子、泣いてたわよ」

「彼女が俺を裏切ったんだよ？」

「相変わらず真っ黒ね。子犬が聞いて呆れる」

「心外だな。さすがに女豹には負けるよ。
　五感全てが満たされなければ私は満足出来ない、
　だっけ？」

「…聞いてたの？」

「毒見されたらどうしようかと思った」

「そんな訳ないでしょ」

「だよな。Aは俺の子猫だもんな」

「子猫ってやめて。子犬のクセに」

「俺が子犬じゃない事知ってるのは誰？
　Aの五感、早速満たしてあげようか？」




いいね、その眼。

何度浴びてもゾクゾクする。




「そうだA、今日はデザートがあるよ」

「…デザート？」

「そう。とっておきの」




秘書課の女が仕入れた情報のうち一つは

Aにとって、
とっておきのデザートになるはずだった。



　

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