Scramble LOVER -夜半の約束

003　side you：あれからの私 ページ3

大学卒業後

就職を機に一人暮らしをしたいと言った私に
心配した両親から出された条件が

幼馴染の隆二と同じマンションに住む事だった。


高校時代の恋人だった広臣が
スペインから帰国したのも丁度その頃。


彼は彼で、今更実家には住めないと言い
私たちと同じマンションを契約した。



隆二と私は5階の並び部屋。

広臣は7階の角部屋。



そしてもう一つ。


「A、おはよう」
「あ、おはよう亜樹」


父親の転勤で
高1の夏にアメリカに引っ越した亜樹も
半年前に帰国していて

私と亜樹は今、同じ会社に勤めている。



「臣君サッカー辞めちゃったんだね」

「うん。でも本人は納得してるみたい。
　出来る事は全部やったって」

「そっか。まぁ人生これからだもんね」




私達の未来には光がある。

この頃はまだそう思えていた。






社会人2年目の初夏。


「A、営業の吉田さんに告白されたんだって？
　フラれて号泣して泥酔したらしいよ」


好意を持って貰える事は有難いけど

その頃の私は
恋人が欲しいとは思っていなかった。



「隆二君と臣君も居るしね」
「それは関係ないよ」



二人に対する恋心はもう終わっている。

亜樹にそう説明しながらも

じゃあこの感情は
どのカテゴリーに属するんだろうと思ったりもする。



「Aさ、目が肥え過ぎてるんじゃない？
　イケメン二人に愛されてたら
　そりゃ周りが霞むよ」

「愛されてないから」

「分かってるくせに。はいはい、そうですね。
　ただの幼馴染と、ただの元カレだもんね？」



その想いに気付かないほど
さすがに幼くはない。


ただ、
それでも今の関係性を続けているという事は
二人がそれを望んでいるからだと思っている。

それは過去に色んな事があったからこそだと
私はそう理解していた。



「本当はどっちが好きなの？」
「好きとかじゃないよ」

「私は隆二君推しよ？」
「ふふっ、彼氏にチクるよ？」

「どうぞどうぞ。推しと現実は違いますから」



亜樹の言葉を借りるなら
それこそ私の感情は推しに近い。

隆二も広臣も、

どちらも尊くて
どちらも大切な存在。



「そんなんじゃいつまで経っても
　恋愛出来ないよ？」



それでいいと思っている。

他の誰かとなんて想像出来ないし

かと言って
どちらかを選ぶなんて事も出来ない。


だからこのままでいい。




最もな理由を付けて

実は自分の居心地の良さを守ろうとしていただけだったと気付くのは

もう少し先の話。

　

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