Scramble LOVER -夜半の約束

014　side R：デジャブ ページ14

そう言えば最近、

Aが
俺の部屋に来る頻度が増えた。



「隆二、ティッシュのストック無くなりそうよ」
「明日買って来る」

「瓶のフタ開かない！開けて隆二！」
「……」




いいんだよ？

別に来ててもいいんだけどさ。

てか居て欲しいんだけどさ。



ただ、

明らかに様子がおかしい。



「ヘアゴム持って来るんだったー」
「取って来ればいいじゃん」

「んー、いいや。ねぇ、リップクリーム貸して？」
「だから取りに行けばいいだろ？」



明らかに自分の部屋に戻る事を、というか
多分だけど臣を避けてる気がする。



「なぁA、なんかあった？」
「ないよ」

「臣と、なんかあったでしょ」
「ないけど…」

「臣の事避けてない？」
「……ない」

「無い訳ねーだろ。あからさま過ぎだわ」
「………」




昔からAは

言いたい事を飲み込む癖がある。


だから、Aが口を開くのを待つ事なんて
慣れたものだ。


待つ時間だって苦痛じゃないし

ずっとそうして来たし

それが俺の…。




デジャブだな。




あれは確か高2の冬。

あの時はAの生理が遅れた時だった。



「言っとくけどA。
　俺、Aが話すまで帰んねーからな？」



あの時と同じセリフに
ハッと顔を上げたAが不貞腐れる。



「…隆二の部屋じゃん」
「だよな」



不貞腐れた勢いのままスマホを操作し

テレビに映し出された
サブスクリプションサービスのホーム画面に

今回も耐久戦かと腹を括った。



「映画？電気消す？」
「……消す」

「酒は？」
「…飲む」



冷蔵庫からハイボールを2本手に取り
部屋の調光を暗くした。


耐久戦に腹を括ると言いながら

俺は昔から
この時間が嫌いじゃない。

むしろ、幼馴染(オレ)の特権だと思っている。




ただ今回は
耐久戦にはならなかった。

映画の序盤。

これだからダメなのよね、と呟いたA。



「なにが駄目なの？」

「私、結局隆二に甘えてる」





この胸騒ぎはなんだ。



終わる、と

なぜかそう感じている。





「私ね、引っ越す事にしたの」

「は？なんで？」

「…もう少しいい部屋に住みたくて」

「だったら俺も同じ所借りる」

「なんでよ」

「Aの母さんにAの事頼まれてるし。
　俺と同じマンションに住むの条件だろ？」

「いつの話よ。もう4年目だよ？」

「関係ねーよ。約束は約束だから」


「隆二。私ね、…自立したい」




　

015→←013　side you：大人の女性

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す