Scramble LOVER -夜半の約束

011　side you：オムライス ページ11

あれ以来、

隆二と広臣は
毎日ではないけど

職場まで私を迎えに来たり
駅で待ち伏せをするようになった。



「もう大丈夫だって」

「いいんだよ。
　俺たちが勝手にやってんだから」



私の訴えは聞き入れて貰える余地がなく

そのお節介を
諦め半分で受け入れていた。





それは半年経った今でも続いていて

今日は広臣が迎えに来た。



広臣と私が二人だけの日、

広臣は必ず
オムライスが食べたいと言う。


隆二は今日、一泊の出張に行っている。


だから、
今日も例外なくオムライスが食べたいと言われ

二人でスーパーに寄ってから帰宅した。





マンションまで来た時、

エントランスの手前に
綺麗な女性が俯き加減で立っていた。



「林さん？」



広臣が林さんと呼んだその女性が顔を上げ、

こちらに歩み寄り

私の前で立ち止まる。





「林さん、話なら俺が」

「あなたがAさん？」

「はい、そうですけど…」





…本当に綺麗な人。


近くで見たら尚のこと、

息を飲むほど綺麗で
全身を纏う大人の雰囲気が、眩しい。




「Aさん、登坂君を解放してあげて」




諭す様にそう言われ

確かに一度、ドクンと脈が動揺したけど

でも、妙に腑に落ちている。




だってその通りだから。


広臣は今日も迎えに来てくれて
私の為に時間を使ってくれていて

それを縛ると表現するなら

私は認める事しか出来ない。




「林さん、こいつは関係ありません。
　ごめんA、先上がってて」



スーパーの袋を私に手渡した広臣が
林さんの背中の低い位置に手を添える。



その画はまるで

淑女をエスコートする紳士のように映った。




私には強すぎた。


その画を見送る勇気などなく
すぐにエントランスに意識を移した。


けど

エレベーターの中でも
玄関に入ってからも

思い浮かぶのはさっきの画。




　“登坂君を解放してあげて”




本当に綺麗な人だった。


大人の女性で

かっこよかった。







意識が散漫する中で作ったオムライス。


広臣はトロトロの卵が好きなのに

固くなってしまった。





　“俺、階段から落ちちゃって”

　“車と接触したと聞いた時は本当に驚きました”


　“俺の女に触んじゃねーよ”

　“登坂君を解放してあげて”






私は今、自分に拒絶反応を起こしている。



守られてばかり。

頼ってばかり。



しかもそれをお節介だと言って



そんな私が

あの人の様な大人になれるはずがない。



　

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