058 side H ページ8
「…居ねーし」
目覚めは
愛おしい声ではなく、アラームだった。
夜が明ければ
きっと
そう予想していた俺に
ぽっかり空いたその場所に残る体温が
そう遠くない時間まで
ここに姫が居た事実を教えてくれた。
いつの間にかハンガーに掛けられていたスーツは
凛々しく俺を見下ろし
幻想ではないとニヒルに笑う。
予想通り、姿を消した姫。
全て想定内。
だからこそ、逃げ出すであろう姫の身体に
俺の証を残したんだから。
大阪支社へ到着した時
Aと岩田は既に会議を始めていた。
隣の小会議室にある凛とした背中。
スーツの下に潜む俺の証に
心の中で、一人笑いをしていた。
今回の企画で大阪支社の主軸を担う同期の藤崎。
「俺が
「まぁ、次、だな?」
もし藤崎が本社に来る事になっていたら
「登坂、今夜付き合えよ?」
「そのつもり」
変わらない日々のようで
少しずつ何かが変化している事にも
証を残した程度で浮かれる俺をあざ笑いながら
何かが動き始めている事にも
全く気付けていなかった。
ホテルに近い居酒屋を予約してくれた藤崎。
「あれ?藤崎?」
「おー、優奈さんも来てたんすか?」
「同期とね」
「まじすか。登坂、ちょっと挨拶していい?」
「もちろん」
ふすまで仕切られた小上がりに
「どうせなら一緒に飲みましょうよ」
「いいんすか?」
やっぱりコレが定めだと思い込んでいた俺は
「お疲れ様です、A
「…おつかれ」
近い未来
痛い目に遭う事も
大きな落とし穴が待ち受けている事も
気付けるはずがなかった。
「登坂クンといい、岩田クンといい
ほんっと本社の顔面偏差値、高いわよね?」
「ははっ、ありがとうございます?」
調子に乗った俺に
呆れた視線が刺さる。
――調子に乗るな。
――はいはい、ごめんなさいー?
「ですよねー。
Aさんの顔面偏差値
「ふふっ、ありがとう藤崎君」
――お前もじゃん?
――はいはい、ごめんなさいー?
「ちょっと藤崎?なんか引っかかる言い方ね?」
「えー?そうっすかぁ〜?」
勝手に満足していた。
― 視線で会話が出来なかったのは初めてだ。
やっぱ出来ちゃうんだよ。俺たち。
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空(プロフ) - ユキさん» こちらこそありがとうございます!移行しました^^よければまたよろしくお願いします! (2021年2月23日 20時) (レス) id: e1512fbbe9 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 空さん» いつも沢山更新ありがとうございます今週から花粉も飛び初めましたけど体調には気を付けて下さいね(><) (2021年2月23日 9時) (レス) id: 5f63e3cc55 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - kotaさん» 知らないと思ってこっそりです(//∇//)このあともよろしくお願いします^^♪ (2021年2月23日 9時) (レス) id: e1512fbbe9 (このIDを非表示/違反報告)
kota(プロフ) - くぅ〜σ(≧ω≦*)可愛いことしますね。隆二メロメロです。別れ道ドキドキする〜 (2021年2月22日 23時) (レス) id: 8448788f30 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ねーやんさん» 途中で思い出しちゃったんです、魔法の言葉(笑)今移行準備してます!そちらもよろしくお願いします! (2021年2月22日 21時) (レス) id: e1512fbbe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空 | 作成日時:2021年2月6日 20時