ゆくあてなき刹那の恋詩 2

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もし神が存在するなら
俺は神を恨む。


「リコ、待てって」


Aさんを臣さんに預けて
俺がリコを追わなければならない現実。



「剛典、見たでしょ？
　あの二人、付き合ってないって言ったけど
　心は繋がってるから」

「だからなんだよ」

「剛典が入る隙なんてないの。
　Aさん、剛典なんて眼中にないんだから！」


「リコ…。頼むからこれ以上
　俺をがっかりさせないでくれないか？」

「だってッ…」

「だってじゃないよ。
　リコ、婚約者がいるんだよ？

　これ以上Aさんや俺…臣さんにも介入するなら
　俺にも考えがあるけど？」




最後の手段だと思っていたその言葉を告げ

傷付いたリコに、傷付いていた。




本気で愛した女だった。




それでもいい(・・・・・・)と思えるほど
愛した女だった。




あの線香花火は綺麗だったと

出来ればいつか、そう思いたかった。




「リコ。婚約者に幸せにしてもらいな？」







　







人工的な明るさを保つ夜の街。

行き交う人の数だけ存在する現し世(うつしよ)。




Aさんの帰りを待って一時間。




地球の歴史でほんの瞬間的なその時間が

俺には、とてつもなく長く感じていた。








「…岩田？岩田っ！」



俺を見つけたAさんが
ヒールを鳴らして駆け寄ってくれただけで

すべてが報われる。



「Aさん、本当にすみませんでした」
「大丈夫？どうだった？」


自分が一番嫌な思いをしたはずなのに
それでも俺を優先してくれる言葉に

情けなさと
申し訳なさと
…嬉しさが込み上げていた。



「大丈夫です。一応、話はしました。
　これ以上迷惑掛けないように
　釘も差しときました。本当にすみません」

「岩田が謝る事じゃないから。
　わざわざ来てくれてありがとう。
　私は大丈夫だから今日は帰ってゆっくり休みな？」



涙の残像を頬に浮かべながら
そう言って笑ったAさん。



　“剛典、見たでしょ？
　 あの二人、付き合ってないって言ったけど
　 心は繋がってるから”



解ってるよそんな事。

臣さんが「A」と呼んだ理由だって。




だからこそ再確認した。

俺がAさんを守りたいと。

俺はAさんが好きだと。




「はい。Aさんも…ゆっくり休んで下さい」

「ありがとう。それじゃ、お休み」

「おやすみなさい」




臣さんや今市さんじゃなく

俺を選んで欲しいと。



　

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