ゆくあてなき刹那の恋詩 2

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抵抗が無い事を
肯定と捉え


ゆっくりと、重ねた。



　“…っ、す、すみませんAさん！！”



あの熱の記憶は
途中からしかない。

だから、その瞼が閉じる瞬間を
心に刻んていた。



押し当てただけの唇。



その先へ進もうとしない俺に
痺れを切らしたのは、多分彼女の方。

薄く瞼を開き
その瞳の奥が、女豹のように微笑んだ。


生唾を飲む程の色香に

スイッチが入る。






「んッ…んン…」






再来した大阪の夜。



あの時俺は

曖昧な世界の中で
他人の物になるリコを想いながら

俺以外の男とキスをする時
俺を思い出すようにと

俺以外の男のキスに満足出来なくなるようにと

必死になっていた。



そして今。


　“今市さん知り合いだったんすね”
　“…昂矢の親友”
　“…そう、だったんすか”


確定に近いその存在に
懲りもなく必死になっている自分に、笑えた。







マティーニ。

スクリュードライバー。

ブラッディメアリー。


そして、ルシアン。






アルコール度数が高く
レディキラーと呼ばれるカクテルの存在を

営業職であるならば
護身の知識として
一度は耳にした事があるだろう。



レディキラー。

女殺しのカクテル。



高濃度のアルコールなんて

酒に強い貴女に飲ませたところで
なんの効力も持たないかもしれないけど


レディキラーという言葉さえ知っていれば

そして運良く
その意味を知ってさえいれば


俺の意図なんて
簡単に解読出来るはず。






マティーニ。知的な愛。

スクリュードライバー。あなたに心を奪われた。

ブラッディメアリー。私の心は燃えている。

ルシアン。誘惑。






どこで気付きました？

どこで覚悟しました？






頬に添えていた手を首筋に流しただけで
苦しそうに零れた吐息。

俺の太ももの上で握り締められた拳。

その拳を握れば
すぐに絡んだ華奢な指。





夢中だった。




虚ろな顔も
背徳行為に溺れる顔も。




大丈夫ですよ、Aさん。



あなたは酒に酔っただけ。

強引な後輩に捕まっただけ。








せめて、ただの後輩から
男だと認識してもらえればそれでいい。


最初はそう思っていたはずなのに





欲が出た。








「場所、変えませんか？」







　








　

　








　





　









「動かないで」

「え？」









「向こうの席に中村リコがいる」

「…っ」





振り向こうとした俺を

Aさんの手が、止める。




　

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