ゆくあてなき刹那の恋詩 2

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「あ、そうだ隆二。お土産！」
「マジで？」
「開けてみて？」


思わぬ大阪土産に
ワクワクしながらその箱を開け


「うわ、かっけー！」
「どう？ソレで飲まない？」


丁寧にラッピングされた箱の中身は
淵にかけて黒くグラデーションになっている
タンブラーだった。


「飲む飲む！」
「あーっ！待って隆二、洗ってくるから」



タンブラーといつも使っているグラスを持って
隣に座ったA。



「仕方ないから注いであげる」
「それはそれは、恐れ入ります」

「ほら、Aも！」
「ふふっ、恐れ入ります？」



互いに日本酒を注ぎ合い
静かに重ねたグラスとタンブラー。



「んーーーっ！美味しい！！」
「ほんと美味いな」



俺の場合、多分それは
特別なタンブラーだったから。



「タンブラー、持って帰ってね？」
「え？なんで？」

「だって隆二の部屋に似合うと思って
　買ってきたんだもの」



ほんっっっとコイツは。

どんだけ人の心をかっさらえば気が済むんだ？



そこに他意はないって事くらい分かってるよ？

分かってるけどさ。



「やば、めっちゃ嬉しい」
「ふふっ、なら良かっ……え、隆二？」

「ありがとな、A」



A。
抱きしめたのは、勢いじゃないからな？



「…隆二、なんかあった？」



なんかあったのはAだろ？


帰って来て早々に泣いたくせに。
泣くような事があったくせに。



「…5分だけ」

「…仕方ないなー」



背中に回った腕は
まるで俺をあやすかのようだった。


どっちが抱きしめられてるんだかわかんねーけど
どっちでもいいや。

おかげで、Aの心臓が
やたら深く脈を刻んでいる事が分かったし。



「10分にして？」
「調子乗るな」
「ははっ、けーち」



ほんの少しだけ腕に力を入れてみた。


口角を上げたAの耳が
俺の胸元に密着し
もしかしたら俺の心音もバレるかもしれないけど

まあ、いい。



「隆二、…飲みたい」


逃げようとしたんだと思うけど
抱きしめたままテーブルに手を伸ばし
タンブラーを口元へ運んだ。


「口、開けな？」


素直に口を開いたAに
タンブラーから流れ込んだ日本酒は

やたらと俺の想像力を掻き立てた。



どんな柔らかさなのか。

どうやって動くのか。

どうやって…



「隆二、…5分経ったんじゃない？」




Aが昂矢の姉貴じゃなかったら
とっくに手を出してるだろう。


昂矢の姉貴じゃなかったら…




「…そうだね」





　

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