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「ちょっと休憩」
そう言いながらフェンスにもたれ、月を見上げる広臣はとても画になっていた。
「喫煙スペース、下にあったよ?」
「何?行って欲しい訳?」
「…そういう意味じゃないけど」
特に交わす言葉もなく
お互いにただ月を眺めるだけだけど
それは自然で
周りの空気までもが温かくなるようだった。
「健二郎、さ」
呟いた私に、広臣が視線を移した。
「結婚するみたい」
「そうなんだ。…早くね?」
「そう…だね」
「辛い?」
「ううん、全然」
「男前だな、A」
結婚が決まった健二郎に
はい、おめでとう!なんて言えるほど
私は出来た人間じゃない。
別れてからそんなに日が経ってないけど、
それでも結婚したいと思える相手に出逢った健二郎。
それが運命なら
私との別れも、ひとつの運命。
いつもならこんな時、
そっと抱きしめてくれるのに
今夜、私と広臣の間には風の通り道があった。
・
「A!」
私を呼んだのは美鈴さんだった。
「寒っ!ちょっといい?江藤さん、帰るって」
「はい、行きます」
「ごめんね登坂、お邪魔して?」
「マジそれな」
江藤さんを見送り、
私を呼び寄せたのは佐々木さんだった。
もうだいぶ酔っている様子の佐々木さんに
隣の剛典は眉をひそめ、舌を出して見せた。
「Aちゃーん、俺謝りたくてさー」
「何がですかー?」
「健二郎だよ健二郎!なんかごめんな?」
「いえ、全然です!」
「いやー、まさか授かり婚するなんてねー?
そろそろ安定期って言ってたっけなー」
えっ?
…授かり婚?
…安定期?
「佐々木さん!ほら、呼んでますよ?」
佐々木さんは剛典に引っ張られ
向こうのテーブルに連れて行かれた。
安定期って事は、完全に私と被ってる。
誰かを抱きながら、私も抱いてたんだ。
いや、違う。
誰かを想いながら、私を抱いていたんだ…
虫唾が走った。
「A…」
「授かり婚だって」
心配しなくて大丈夫。
この身震いは、確実に拒絶反応。
嗚咽する寸前だ。
ほんの少しだけ残っていた健二郎への“情”が
跡形もなく消えて行った。
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空(プロフ) - ユキさん» ありがとうございます^^ライブは、このお話の030での登坂さん風に“ご想像で”です(#^.^#) (2020年1月27日 16時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 空さんのストーリー大好きです三代目perfectyearライブは観に行く予定はありますか?私は京セラ観に行きたいけど倍率凄く高いですね(´;ω;`) (2020年1月27日 12時) (レス) id: 7bd6b3fcc4 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ユキさん» 楽しんで頂ければ幸いです^^ (2020年1月26日 19時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三代目メンバーのストーリー大好きです(*ゝω・*) (2020年1月26日 17時) (レス) id: 7bd6b3fcc4 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - shireyさん» ありがとうございます(^^♪ (2020年1月26日 13時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空 | 作成日時:2020年1月18日 10時