Over Night

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「明日さ、暇？」

「うん、特に用事はないよ？」

「だったら、買い物付き合ってくれない？」

「うん？いいけど？」


エレベーターの中で、明日の予定が決まった。


「じゃ、後でLINEする」
「わかった。じゃーね」


エレベーターを降り、急いで部屋に向かった。

改めて手にしたコフレをしばらく眺め
試したい気持ちと勿体ない気持ちがせめぎ合い、

結果、後者の勝ち。


「明日にしよ…」


もう一度改めてコフレを眺めていたら
広臣からLINEが届いた。


“明日、11時頃で大丈夫？”
“大丈夫だよ”
“じゃあ11時頃3階行くわ”
“了解”


同じマンション内でLINEして、同じマンションの住人が迎えに来る。
その状況が不自然にも新鮮にも感じた。


翌日。
丁度11時にインターホンが鳴った。



「…今日は眼鏡じゃないんだ？」
「昨日は顔むくんでたの」
「ふーん」



…ふーん、って！



なになに？

ちょっと可愛いんじゃない？


なんて思ってたら





不意に握られた右手に


今度はドキッとした。


「…私、酔ってないよ？」
「いいじゃん？今日は俺とデート」



あーっ、もう。

勝手にドキッとする心臓が、悔しい。



「大丈夫。駐車場までだから」
「え？車なの？広臣車持ってたの？」


地下の駐車場には
帰国に合わせて納車したというピカピカの車が停めてあった。


「どうぞ？姫」

そう言って私をエスコートした広臣は
やっぱり“いい男”なんだと思う。






流行りのＥＤＭが流れる車内。
ハンドルを握る広臣はご機嫌な様子だった。

「どこいくの？」
「ん？家具、見たくてさ」




30分程車を走らせ到着したインテリアショップ。
ソファーが欲しいと言う広臣と一緒に
座り比べをしていた時。


「御新婚様でいらっしゃいますか？」


店員にそう声を掛けられ苦笑いをしたら

「はい、新居に置きたくて」

さらりとそう言った広臣は悪戯に笑っていた。


「“はい”って何よ」
「それよりA、ここ座ってみ？」


腑に落ちないまま座らせられたそのソファー。


「うわぁ･･･」
「ね？やばくない？」
「…うん、最高」
「コレだな」
「コレだね」


一度座って即気に入ったそのソファーを購入し
店を出た。


「いいなー、あのソファー」
「届いたら座りに来る？」
「うん！行く！」


自分のソファーじゃないのにワクワクする私。


「メシ食うか？」
「うん！食べる！」


ククッと笑った広臣の手が私の頭を撫でた。

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