１４０話 ページ43
木々が覆い茂る森の中、二人は開始の合図を待っている。
A達のステージは壁で囲まれた森だった。
相手は火属性故にAは嫌な予感がしてならない様子。
(下手にゴール前から動けない筈ですが……)
それから一分後に試験は開始された。
Aは木の幹を踏み台に蹴り進み、椎名はレースの時と同じ方法で木々の間を進んでいる。
常に【円】を使用しているAだが、エンデヴァーの気配はないようだ。
『おかしいですね。いまだに気配を感じ取れません』
「それって……ゴール前から動いてないってこと？」
『かもしれません……ゴール近くまで来たらルイは木の上で隠れていて下さい。彼を離れさせるか、隙ができたら全速力でゴールへ』
「………うん」
慎重に進むこと数分後には、二人は木の上で言葉を詰まらせた。
視線の先にはゴールがあるであろう場所。
しかし、森を囲む壁の前では木々が燃え盛り……他の方角を見ても同じく炎が壁を前に立ち塞がる。
視線をゴール前であろう場所から数メートル前に立っているエンデヴァーへと向け、Aは引きつった笑みを浮かべながら口を開く。
『まるで炎の壁ですね。ご丁寧にもゴール前にまで……木が成長するのには長い時間が必要なのに……おのれ敵め！』
「あれじゃあ……私の紐は焼け切れちゃうよ。それ以前に炎の中なんて……っ」
想像したのか椎名はみるみる青ざめていく。
もちろん、Aはそんな事をさせる気はない。
時間も限られているだけに悩んでいる暇はない為、Aは戦闘中に錬金術で道を作るという作戦とも呼べない案を実行に移す。
『……時間もありませんし、ちょっと行ってきます』
苦笑交じりに言ったAの言葉に、椎名は複雑な表情を浮かべたまま頷いた。
そして、Aが着地と同時に指を鳴らし、エンデヴァーに向かって炎が襲う。
「ようやく動いたか…」
自身の炎で軌道をずらし前を見据えるエンデヴァー。
炎と煙の間から現れたのは右拳を打ち込もうとするAだった。
念を使用していると分かる程の威圧感と、感じる力にエンデヴァーの目つきが変わる。
迫る拳ではなく、その腕を掴むと同時にもう片方の手でAの顔を掴んだ。
勢いはそのままに腕は固定され、掴まれた顔は仰向けに地面へと叩きつけられた。
『ぬあ゛っ！』
「どんなに威力があろうとも見切ってしまえば何とでもなる」
この時、Aは職場体験中に行ったエンデヴァーとの対戦を思い出し小さく舌打ちをする。
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作者名：SORA | 作成日時：2017年12月10日 0時
