10.お月様 ページ19
青年は泣いていました。
また兄と自分を比べられたからです。
「俺は...俺だ」
涙を零しながら、青年はそう言葉を漏らしました。
青年は毎夜、そうやって一人泣きながら同じ言葉を繰り返し口にしていました。
そんな青年を目にしたお月様は青年を憐れに思い、ある日青年がまた泣いている時に青年のもとへと姿を現しました。
「お主の願いを一つ叶えよう」
何でも良いぞ、お月様はそう言い青年へと笑い掛けました。
青年は泣いた所為か、頭がぼーっとし、冷静な判断が出来なくなっていました。
もし、叶うのなら＿＿＿
青年は、お月様に自分の願いを言いました。
翌日、青年が眠りから目覚め自室を出ると、其処には当然かのように兄の姿がありました。
青年は初めあの男にからかわれたのだと怒りを覚えましたが、其れがどういう事なのか気付き、酷く後悔しました。
その夜、お月様は再び青年のもとへと姿を現しました。
青年はお月様へと懇願するかのように言葉を絞り出しながら言いました。
「願いを、取り消してくれ....」
「無理だな」
お月様は青年の言葉をすぱりと断り、青年の懇願を聞き入れませんでした。
一度叶えた願いは取り消せない、と。
絶望し目の焦点が定まらなくなってきた青年へ、お月様は、瞳の中の三日月を更に歪ませてこう言いました。
「＿＿＿お主が願ったのだろう？ 兄を消してくれ、と。」
お月様の無情な言葉は、青年を壊すに足りうるものでした。
青年は、今日もまた泣いています。
言葉は発さず、ただ涙だけを流して泣いています。
綺麗に整頓が為された光の射さない真っ暗な部屋の中で、ずっとずっと、一人泣いています。
・
・
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青年が兄だと思っていた者は兄ではなかった。
彼は、何処かにて生きていた“本当の兄”を消してしまった。
出演刀剣男士：山姥切国広・三日月宗近
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三井 聖夢(プロフ) - 誤字発見しました。長曽根では無く、長曽祢ですよ (2017年7月12日 1時) (
レス) id: 8eacfdc508 (このIDを非表示/違反報告)
紫蝶桜 - 青江は一家に一台必要だな(真顔) (2017年6月28日 14時) (レス) id: 4bd53c1755 (このIDを非表示/違反報告)
ちみ - 押し入れ・・・。うちにも押し入れある・・・。アカアアアアン！！これから開けれない・・・。 (2016年7月30日 9時) (レス) id: 1cf67d3182 (このIDを非表示/違反報告)
安定ほなみ - 青江さんか石切丸さんがいればよかったのに･･･ということはまさか･･･！おしいれの中に居たのはアイツか･･･！怖ッ･･･！ (2016年1月6日 17時) (レス) id: 97261ea5d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天野 氷空 | 作成日時：2015年11月7日 12時
