07.遊園で ページ13
〜 一期 視点 〜
私の所属する本丸の一角には、主のご意向により遊園が設けられている。
基本そこで遊んでいるのは短刀なのだが、時に彼らに付き合い非番の刀剣などが共に遊んでいる姿も見掛ける。
今は丁度昼餉が終わり、私は厨で後片付けを行っていた。
「いち兄！」
ふと声を掛けられ其方の方へと顔を向けると、ひょこりと弟刀である厚藤四郎が勝手口の方から顔を覗かせていた。
私と視線が絡み合うと、厚はにこりと見目相応の幼い笑顔を浮かべ溌剌とした声色で言葉を紡ぐ。
「おや、厚。どうしたんだい？」
「おぅ、実は今から遊園に行くからさ。いち兄に伝えとこうと思って」
私も名を連ねる刀派 粟田口は他と比べて短刀が非常に多く、それ故に遊園へと遊びに行く者も多い。
藤四郎の長兄として、私は遊園が出来た際に弟達へ、遊びに行く際は兄の誰かに言っておく事と言い付けていたのだ。
勿論、叔父である鳴狐殿でも良いとは言っているが。
「誰か共に行くのか？」
「えっと、オレと秋田、乱だな！」
「そうかい、うん了解したよ。くれぐれも怪我のないよう注意して遊ぶんだよ？」
「分かってるって！」
屈託のない笑顔を浮かべ私の言葉に了承を返すと、先に乱達が行っているのか厚は遊園の方へと駆け出した。
＊ ＊ ＊
そろそろ夕餉の仕込み時かという時刻になり、私が厨へ赴いている際。
「いち兄！」と乱が慌てた様子で駆けて来た。本丸内で走っては危ないよ、と声を掛けようとした矢先に乱から「秋田が..！」という声が上がり、私は何かあったのだと勘づき乱と共に遊園へと急いだ。
遊園では、遊具の一種でもある砂場の場で秋田が蹲りながら、必死に左目を擦っていた。
そんな秋田の隣には厚がおり、困惑した様子で秋田を慰めていた。
「秋田、どうしたんだい？」
私は慌てて秋田の傍に駆け寄り、目線を合わせるように腰を折ってそう問い掛けた。
「っ、いち、兄..遊んでたら、目が砂に入っちゃって..取れないんです..」
秋田はそう震えた声で私に言葉を返した。
「そうか..でも擦ってはいけないよ、目が悪くなってしまう。
大丈夫、私が取ってあげるからね。」
私がそう言いながら秋田の赤くなってしまった手を止めると、秋田は安心した様子で笑顔を浮かべた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
三井 聖夢(プロフ) - 誤字発見しました。長曽根では無く、長曽祢ですよ (2017年7月12日 1時) (
レス) id: 8eacfdc508 (このIDを非表示/違反報告)
紫蝶桜 - 青江は一家に一台必要だな(真顔) (2017年6月28日 14時) (レス) id: 4bd53c1755 (このIDを非表示/違反報告)
ちみ - 押し入れ・・・。うちにも押し入れある・・・。アカアアアアン！！これから開けれない・・・。 (2016年7月30日 9時) (レス) id: 1cf67d3182 (このIDを非表示/違反報告)
安定ほなみ - 青江さんか石切丸さんがいればよかったのに･･･ということはまさか･･･！おしいれの中に居たのはアイツか･･･！怖ッ･･･！ (2016年1月6日 17時) (レス) id: 97261ea5d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：天野 氷空 | 作成日時：2015年11月7日 12時
