06.クローバー ページ11
〜 獅子王 視点 〜
近所で殺人事件が起きた。
被害者は四十代半ばといった風貌の何処にでもいそうなサラリーマンの男性だ。
その殺害手口は非常に残酷で、男性の死体は目も当てられぬ無残なものであったらしい。
自宅の近所という事もあり、俺は花でも供えようと、花束を手に殺害現場へ向かった。
すると、大量のクローバーをお供えしている、日本人にしては珍しい月白色の髪を持つ男性を目にした。
俺は何故クローバーなのだろうとふと気になり、失礼を承知で男性へと問うた。
「何でクローバーをお供えしてるんだ？」
いつもの癖でついタメ口＿敬語がなっていない口調となってしまったが、男性は特に気を害した様子もなく質問に答えてくれた。
「クローバーは....幸せの花、というでしょう..？
向こうでも、幸せになれますようにと思ったのですよ....。」
口元を緩ませてそう語る男性は本当に優しそうで、その目はとても晴れ晴れとしていた。
優しい人なんだな、そう俺は思った。
「......実は、私には二人..弟がいたのですが....。少し前に、交通事故で二人とも亡くなってしまったんです..。だから、なのでしょうか..。突然の不幸に襲われた人達の事を知ると、どうしようもなく弟達と重ねてしまうのです....。」
薄っすらと目に透明な膜を張りながらそう語った男性は、少しすると「では」と言い去って行った。
交通事故....恐らく少し前の事件ならば、あの歩道に軽自動車が突然突っ込んで来たという事件の事だろう。
轢かれた被害者数名は、血塗れとなり見るにも耐える程の死体となっていたと聞く。
今回の殺人事件も、同じく死体が無残なものだ。
男性は其処に弟達を重ねでもしたのだろう。
俺は、弟達の死を乗り越え、更には同じような目に遭った人にまで情を掛けている男性を素晴らしいと思いながら、自宅へと歩を進めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
三井 聖夢(プロフ) - 誤字発見しました。長曽根では無く、長曽祢ですよ (2017年7月12日 1時) (
レス) id: 8eacfdc508 (このIDを非表示/違反報告)
紫蝶桜 - 青江は一家に一台必要だな(真顔) (2017年6月28日 14時) (レス) id: 4bd53c1755 (このIDを非表示/違反報告)
ちみ - 押し入れ・・・。うちにも押し入れある・・・。アカアアアアン！！これから開けれない・・・。 (2016年7月30日 9時) (レス) id: 1cf67d3182 (このIDを非表示/違反報告)
安定ほなみ - 青江さんか石切丸さんがいればよかったのに･･･ということはまさか･･･！おしいれの中に居たのはアイツか･･･！怖ッ･･･！ (2016年1月6日 17時) (レス) id: 97261ea5d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：天野 氷空 | 作成日時：2015年11月7日 12時
