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ORDER/立ち止まることなく ページ46

「─皆。休んでいたところ、集まってもらってすまない。」

濡れた髪も服もそのままに、談話室に集ったメンバーを見渡しながら、僕は切り出した。どこか異様な雰囲気を感じ取ってか、皆の表情は固い。

「マスターの姿が昨日から見えなかったことは、全員把握しているね。初代メンバーによれば、それは前までも度々あったことだから、気に留めなくても無理はない。─だけど。」

ちらりと、横に蹲るカービィ君を見遣る。両の手で、ただそれだけ残されていたという彼のロケットを握り締めるその表情は、到底見ていられるものでは無かった。…僕もきっと、似たような顔をしているのだろうけれど。

「マスターが戻らないまま─キリアが居なくなった。」

これには流石にどよめきが起こる。ネスやプリンを始めとする、彼とよく遊んでいるメンバーはショックを隠し切れない様子で互いに顔を見合わせ、他も皆一様に困惑と驚きの入り交じった複雑な顔をしていた。ざわめいた空気に、カービィ君のロケットを握る手に力が入ったのが見えた。

「…落ち着いて欲しい。彼が居なくなったことは由々しき事態だ。彼は、まだマスターから外出許可を貰って間も無いし、誰にも何も言わずに出掛けるとは考えられない。それと、彼のロケットだけが残されていた事を鑑みると─」

─落ち着け、だなんて。一体どの口が言うのだろう。内心は、カービィ君と同じかそれ以上に荒れ狂っているというのに。知らぬふりをして先導者を気取る自分は、酷く滑稽に思えた。

嫌な汗が滲む。言葉を切った先─僕やカービィ君だけでなく、恐らく誰もが考えたくはないその『可能性』を口にする事が恐ろしい。

可能性は、口に出せばきっと確定してしまう─『真実』になってしまう。…けれど『可能性』のままでは、何も触れられない。変えられない。

それなら。今の僕がすべき事は─


「─恐らく、キリアは何者かに連れ去られた可能性が高い。」


口に出した言葉は、戻らない。目を潤ませて啜り泣くナナにポポが寄り添い、ピーチ姫やマリオは悲痛そうな面持ちで息を呑んだ。

カービィ君の視線を感じた。「どうして」と責めるような目の彼も、本心ではきっと、そうなのだと分かっている。


「─これは、極めて異例の事態だ。そこで、僕ら『スマッシュブラザーズ』は特別警戒態勢に入り…マスターが不在の為、代わりに僕ら自身で陣頭指揮を執る事になる。」


…全員の顔を見渡す。皆が大きく頷いたのを合図に、僕らの戦いが始まった。

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チイチ(プロフ) - Mirai atさん» コメント有難うございます(^^) 展開は幾つか考えた中から選んだ物なので、意外に思って頂けたなら幸いです!それが狙いでもありましたので…(笑) これからも頑張らせて頂きますね! (2019年11月11日 2時) (レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
suwaro - チイチさん» 返信くれた!?めっちゃ私も嬉しい!ありがとうございます! (2019年11月10日 20時) (レス) id: 1a4b63d778 (このIDを非表示/違反報告)
Mirai at(プロフ) - 意外な展開ですねー。頑張ってください! (2019年11月10日 9時) (レス) id: 86ab96dee6 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - suwaroさん» !!!まさかコメントを頂けるとは…有難うございます…!嬉し過ぎます…!これからも頑張らせて頂きますので、どうぞ宜しくお願いします〜! (2019年11月8日 21時) (レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
suwaro - 続きが楽しみです!  頑張ってください! (2019年11月8日 21時) (レス) id: 1a4b63d778 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チイチ | 作成日時:2019年6月18日 23時

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