SHADOW／少しずつ、少しずつ。 ページ42
「─あの、ピーチさん。これは…？」
「図書室で本を読んでいたら、『ニホン』…だったかしら？そんな名前の国の事が書いてあったの。その本によれば、これはこうして…」
手の平に収まるほどの小ぶりな布の玉。両の手に1つずつそれを持ったピーチは、キリアの目の前でそれをぽんぽんと、次々両手で操ってみせた。まるで生きているように宙を舞う2つの玉に、少年の目が輝く。
「わあ…！すごい！」
「ふふっ、有難う。これは『オテダマ』って言う遊び道具の1つなんですって。お裁縫の時に余った布と、キッチンから少しだけお米を頂いて作ったのだけれど…アナタにあげるわ。」
「えっ、いいんですか？」
「ええ、勿論。私が持っているよりも、きっとアナタが持っていた方が良いわ。…そうそう、上手な人は3つでも出来るらしいの！だから、3つあげておくわね。」
いつか出来るようになったら、私にも見せてちょうだいね？─3つの玉を手渡しながら少年に悪戯っぽく笑った姫は、ウィンクまで添えてからドレスの裾をふわふわと揺らして去って行った。
＊
「いっち、に、さん─うわっ！」
昼下がりの談話室で1人熱心にお手玉を練習する少年の手から、再びころころと玉が転げ落ちる。もう何回目かも分からなかったが、彼は拾い上げるとまた黙々と練習に戻る。
…と、彼の座るソファの背後から、にゅっと伸びる影があった。
『コンニチハ、キリア。』
「ッう、わあっ！？」
予想もしなかった位置からの声に、少年の肩がびくりと跳ねた。同時に玉がまた床を転がっていく。
「な、なんだ。ゲムヲさんか。びっくりしたぁ…」
『驚カセテシマッタ？』
「うん、かなり…でも、もう大丈夫です。どうかしましたか？」
平面世界の住人の目線─顔が無い為正確には分からないが─は、問い掛ける少年の手元…再び拾われたお手玉に向けられていた。
『ソレハ？』
「あ、オテダマって言うらしいです。こう、ぽんぽーんってして遊ぶんですけど、中々難しくて…あ、やってみますか？」
『良イナラ、是非。』
少年が、お手玉を彼に手渡す。が─手が触れ合ったその瞬間、少年は指先に痛みを覚えた様な気がして、僅かに指を引っ込めた。
首を傾げる彼に、慌てて何でもないと笑う。気の所為だと自己完結した少年は、次の瞬間彼の手の上で見事に踊り出した2つの玉に歓声をあげたのだった。
─痛みが走った瞬間、極小さな黒紫の葡萄の様な何かがその指先から零れ落ちた事を、2人は知る由もなかった。
COLLAPSE／始まりは音も無く。→←RESOLUTION／人でなしの問答
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チイチ(プロフ) - Mirai atさん» コメント有難うございます(^^) 展開は幾つか考えた中から選んだ物なので、意外に思って頂けたなら幸いです！それが狙いでもありましたので…(笑) これからも頑張らせて頂きますね！ (2019年11月11日 2時) (
レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
suwaro - チイチさん» 返信くれた！？めっちゃ私も嬉しい！ありがとうございます！ (2019年11月10日 20時) (レス) id: 1a4b63d778 (このIDを非表示/違反報告)
Mirai at(プロフ) - 意外な展開ですねー。頑張ってください! (2019年11月10日 9時) (レス) id: 86ab96dee6 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - suwaroさん» ！！！まさかコメントを頂けるとは…有難うございます…！嬉し過ぎます…！これからも頑張らせて頂きますので、どうぞ宜しくお願いします〜！ (2019年11月8日 21時) (レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
suwaro - 続きが楽しみです! 頑張ってください! (2019年11月8日 21時) (レス) id: 1a4b63d778 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チイチ | 作成日時：2019年6月18日 23時
