ROLE／創造と破壊 ページ39
「…クレイジー。キミは─」
「お前が説明した所で、此奴は納得するか？…しないだろう。オレがアレを殺しかけた事は事実なんだからな。」
言うと、緩慢な動作で手足に伸びていた幾本かのコードや管をぶちぶちと取り去る。枕元のモニターにはエラー表示が出ていたが、すぐにぷつんと電源が落ちた。
纏う衣服は、常日頃見慣れたマスターと同様の服ではなく、病院着─彼は知識としてしか知らないが─の様な簡素な物。足元も素足であり、歩く度にカツカツという何時もの音が聞こえない事が、カービィにはやけに気味悪く感じられた。
「─お前。カービィとか言ったか。」
「…そう、だけど。」
やがて、両者は対峙する。カービィはクレイジーの感情の読めない瞳を真っ直ぐに見返しながら、次の言葉を待った。
言い訳だろうか。それとも謝罪？…どんな言葉が返ってこようが、そう簡単に許してやるもんか。
「まず初めに言っておくが。…オレは、別に何も最初から彼奴を殺す目的で近づいたんじゃない。」
まあ、信じられないだろうが─自嘲するようにそう続けたクレイジーの言葉は、言い訳のようなモノ。抗議しようと口を開きかけたカービィだったが、続けて言葉を紡いだクレイジーに閉口せざるをえなくなった。
「そこのマスターを『創造』とするなら…オレの役割はさしずめ『破壊』だ。創り出す事で何かを与えるマスターと違って、オレは─
「…つまり、あの子に何かを与える為に、あの子を殺しかけたって─そう、言いたいの？」
「…それが、オレの言える事実だ。」
─ふざけるな。そう叫びたい気持ちを呑み込んで、カービィはキッとクレイジーを睨み付けた。
「アレは、マスターの…『片側』の存在に長く触れ過ぎた。アレ自身が両極端を内包する身でありながらそんな事をしたら─お前でもどうなるか分かるだろう。」
「…バランスが、崩れる？」
「そうだ。…だが、今からもう片側の力を与えていったところで、1年の差は埋まらない。─その差を埋めるには、急速にオレの『破壊』の力を入れて、アレの身体を安定させるしか無かった。」
クレイジーの語る話は、到底信じられるものでは無い。眉唾もいい所だ。
だがカービィは─《正義》の戦士として此処へ呼ばれた彼は、決して非情にはなり切れなかった。未だ色濃く残る恨みや怒りの中に、本人も気づかない程微かに、クレイジーを理解しようという心が生まれていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チイチ(プロフ) - Mirai atさん» コメント有難うございます(^^) 展開は幾つか考えた中から選んだ物なので、意外に思って頂けたなら幸いです！それが狙いでもありましたので…(笑) これからも頑張らせて頂きますね！ (2019年11月11日 2時) (
レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
suwaro - チイチさん» 返信くれた！？めっちゃ私も嬉しい！ありがとうございます！ (2019年11月10日 20時) (レス) id: 1a4b63d778 (このIDを非表示/違反報告)
Mirai at(プロフ) - 意外な展開ですねー。頑張ってください! (2019年11月10日 9時) (レス) id: 86ab96dee6 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - suwaroさん» ！！！まさかコメントを頂けるとは…有難うございます…！嬉し過ぎます…！これからも頑張らせて頂きますので、どうぞ宜しくお願いします〜！ (2019年11月8日 21時) (レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
suwaro - 続きが楽しみです! 頑張ってください! (2019年11月8日 21時) (レス) id: 1a4b63d778 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：チイチ | 作成日時：2019年6月18日 23時
