SECRET／異界逢瀬 ページ4
─願いは、確かに届きました。
「…そうか」
呟いて、蒼髪の青年は僅かに安堵の表情を浮かべる。
次いで星の戦士がひょこりと顔を覗かせ、不安げに《彼》へと問いかけた。
「ねえ、本当にこれで、あの子は助かるの？」
「さあ…どうでしょう。先に申し上げた通り、確率としては僅かです。
しかし、彼の父が、彼を彼として認識できるか否か…これは、とても大きなズレとなるでしょう。変化は起きます。」
「─まあ、つまりは待つしかないということだね。」
堅苦しい《彼》に苦笑しながら、蒼髪の青年はそう言って、改めて《彼》を見つめた。
記憶の中の彼と同じ姿の《彼》は、けれどどこか大人びていて。─暗く沈むその瞳は、諦観に満ちている。
ここは、何処にも存在しないが故に、何処にでも存在する─つまりは不思議空間だという。
懐かしい彼…目の前にいる《彼》も、並行して存在する無数の世界の何処かの彼だと言う。俄には、信じ難い話だが。
自分を射抜く視線に、僅かに表情を歪め─すぐに無表情になり、《彼》は二人に向き直る。
「それでは約束通り、貴方達から《代償》を頂きます。…よろしいですね？」
「…うん、いいよ。」
「分かってるさ。今更だよ、キリア。」
「─だから、その名でボクを呼ばないでくださいと…」
眉を顰め不快そうな顔をした《彼》に、青年は笑いながら謝罪する。
「…それでは。─該当者二名。『キリアに関する記憶』を《代償》として頂きます。」
《彼》が、青年と戦士に手を翳す。
ふわりと、光が二人の身体を滑り、軈て光の玉が弾き出される。それが《彼》の手に触れ─その身体に、溶けるようにして消えた。
「─時間です。貴方達はそれぞれの世界へと戻り、目覚めた時には此処での事も、彼の事も忘れています。…最後に、ボクから一つ。」
─貴方達の助力に、心から感謝します。
彼と同じ笑みを浮かべ、《彼》は消えた。
それを見届けてから。少しずつ薄れる意識の中、青年と戦士は向かい合った。
「ねえ、何処かのマルス。ボクはきっと、君をずっと許せないんじゃないかなぁ」
「それはそうだろう、何処かのカービィ君。そして僕は、きっと君をずっと羨むよ」
「そっか。うん、仕方ないね」
最後まで。互いの目から、目を逸らすことなく。
「それじゃ、ばいばい」
「うん、さよなら」
親友を殺された誰かと、愛し子の傍に居られなかった誰かは、その場から消え去った。
─後には、ただ穏やかに星の海が揺れている。
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チイチ(プロフ) - Mirai atさん» コメント有難うございます(^^) 展開は幾つか考えた中から選んだ物なので、意外に思って頂けたなら幸いです！それが狙いでもありましたので…(笑) これからも頑張らせて頂きますね！ (2019年11月11日 2時) (
レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
suwaro - チイチさん» 返信くれた！？めっちゃ私も嬉しい！ありがとうございます！ (2019年11月10日 20時) (レス) id: 1a4b63d778 (このIDを非表示/違反報告)
Mirai at(プロフ) - 意外な展開ですねー。頑張ってください! (2019年11月10日 9時) (レス) id: 86ab96dee6 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - suwaroさん» ！！！まさかコメントを頂けるとは…有難うございます…！嬉し過ぎます…！これからも頑張らせて頂きますので、どうぞ宜しくお願いします〜！ (2019年11月8日 21時) (レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
suwaro - 続きが楽しみです! 頑張ってください! (2019年11月8日 21時) (レス) id: 1a4b63d778 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チイチ | 作成日時：2019年6月18日 23時
