おやすみなさい、また明日の夜に ページ44
「お母さま、見てください！」
星がとっても綺麗です─黒い大きな瞳を丸くしながら、彼女は空を見上げていた。濃紺の中無数に散りばめられた輝きたちが、瞳に反射している。
「…お母さま？」
「─いえ。ごめんなさい、A。」
何でもないですよと不安げな瞳に微笑めば、彼女はほっとしたように笑った。そのまま、夜露に濡れた草を踏みしめて、私の元へと歩み寄る。まだ小さなその身体をそっと抱き上げて膝の上へ座らせると、恐る恐るといった風に体を預けられた。
「ねえ、お母さま。…明日は、早起きできるでしょうか？」
「どうでしょう…Aは、とてもぐっすり眠ってしまうから…」
「ええっ…明日こそ、お日様が見たいです…！」
慌てたような彼女に冗談ですよと笑いながら、その頭に優しく手を添えて夜を細く割いたような黒髪を梳いた。
「むむ…お母さまは意地悪です…」
「ふふっ…でも、夜空を見上げるのも楽しいでしょう？」
「そうですけど…」
やっぱりお日様が見たいです─焦がれるように空をもう一度見上げた彼女の様子に、髪を梳く手を止めた。
「…それじゃあ早起きができるように、今日はもう寝てしまいましょうか、ね？」
「そう、します…ふあ…」
「ええ、おやすみなさい」
大きく欠伸をしたAの目尻に浮かんだ雫を拭い、彼女を抱いたまま立ち上がる。ゆるゆると優しく揺すれば、彼女はあっという間に穏やかな寝息を立て始めた。
「…ごめんなさい、A。」
傍へ寄ってきたチコが、立ち止まった私を不安そうに見つめた。淡く光を纏うその身体を撫でてから、ふとこの子に出会った時の事を思い出す。
事の発端は、この世界が存亡の危機に陥った時の事。ダーズの統べていた闇側の世界、そこに生じていた謎の空間から突如として、彼女は現れた。
眠り続ける彼女は、全てが終わった後に目を覚ました。マスターによれば、彼女は自分が何者かも分からないのだと言う。
そしてただ一つ分かったのは─彼女は本来であれば、闇側に属する生命体である事。故に…彼女の身体は、あらゆる光に耐えられない。
『彼女の事はキミに一任したい。夜間だけという条件を守ってくれれば、他はどう扱おうと構わないよ。』
そんな経緯で私の元へ預けられた彼女。だから…私は彼女の『お母さま』では無い。そして彼女の帰るべき場所は、私達の手で無へと還ってしまった。
「─ごめんなさい。」
誰に言うでもなく呟いたその言葉は、夜風に溶けて消えた。
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麗 - マヨナカコープ、ありがとうございます！ジョーカーとウルフ、どちらも好きなキャラなので、ありがとうございます！ (2019年9月28日 20時) (
レス) id: d0864ff377 (このIDを非表示/違反報告)
麗 - 全然！1年経ったって、(？)いくらでも待ちます！頑張ってください、応援してますよ、チイチさん！ (2019年9月15日 15時) (レス) id: d0864ff377 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - 麗さん» はい、麗さんこんにちは！(^^) リクエスト有難うございます！喜んでお受けします！ただ、日替わりの消化も済んでいないので完成は少し先かも知れません…どうか気長にお待ち頂ければと…！ (2019年9月15日 13時) (レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
麗 - こんにちは(｀・ω・´)麗です(｀・ω・´)……はい、こんにちは！あの、リクでウルフとジョーカーが夜の散歩をしているお話を書いて下さい！それを夢主ちゃんが見ちゃった……的な？ (2019年9月15日 12時) (レス) id: d0864ff377 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - ロランさん» いえいえ、喜んで頂けたみたいで、とても恐縮です…！ 此方こそリクエスト有難う御座いました！ また機会があれば、よろしくお願いします(^^) (2019年8月21日 16時) (レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チイチ | 作成日時：2019年1月19日 0時
