・ ページ22
「彼の銃…いや、ブラスターと言うんだったか。それを見せてもらおうと思って。」
「夕方頃にいきなり頼まれた時には何事かと思ったが。…どうやらコイツは銃だのブラスターだの…ダックハントのもか？そういう武器に興味があるらしいからな。」
─夜飯の後にフォックスの野郎も声を掛けられてたな。
そう言いながら、ウルフさんは手元でブラスターを回す。普段、あまり周りとは馴れ合わないだの何だのと言っている彼は、実はファイター達の中でも1、2を争うくらいには周りを良く見ていると思う。やっぱりリーダーだった経験があるからだろうか、彼の目は何処までも冷静だ。
ブラスターを回す手を止め、ウルフさんはそのままジョーカーさんへそれを放る。受け取った彼は、ウルフさんに許可を取ってから、じっくりと観察を始めた。
─度が無い事を示す、歪みの無いレンズ越しの目は、何処までも真剣だ。
降り注ぐ月光をブラスターが反射して、彼の瞳にも淡く映り込む。
…あまり意識した事は無かったけれど、彼は瞳が大きい。切れ長のその目が、細部を見る為に細められたり、何かに驚いて見開かれる度に、何故だかどきりとしてしまって、隠すように手の中のコップを意味も無く握った。
「─うん、有難う。参考になったよ。」
「…お前のとは全く別モンだろう。」
「それでも、誰かの使う武器を見るのは楽しい。…これは元々性能は良いけど、よく見ると何度も修繕した跡…それに、使い易いように工夫が重ねられている。─良い武器だ。」
一通り眺めたジョーカーさんは、そう言いながら丁寧にブラスターを返した。
「……そうかよ。」
受け取った彼の反応は素っ気ないものだったけれど、尻尾がゆらゆらと揺れているのが見えたから、かなり喜んでいるんだろうな。そりゃあ誰だって、自分の愛武器を褒められたら嬉しい。
…ん、あれ？またウルフさんから音符が出たような…見間違い、かな？
＊
忘れかけていた眠気が、欠伸と共に押し寄せる。耐え切れず、くぁ、と1つ控えめに零した。
「─ああ、そうだ。A、君とも今度、色々と話がしたい。」
「…えっ？だ、だって私は他の皆さんみたいなものは、別に─」
「そうじゃなくて。純粋に、年齢が近いから無駄話でも出来たらと思ったんだけれど…」
どうかな、と尋ねてくる彼に─その強い瞳に、私は思わず首を縦に振る。
─何かで、私と彼が結ばれるような感覚。
そして同時に、あの音符が音を立てて零れ落ちたような気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「短編集」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
麗 - マヨナカコープ、ありがとうございます！ジョーカーとウルフ、どちらも好きなキャラなので、ありがとうございます！ (2019年9月28日 20時) (
レス) id: d0864ff377 (このIDを非表示/違反報告)
麗 - 全然！1年経ったって、(？)いくらでも待ちます！頑張ってください、応援してますよ、チイチさん！ (2019年9月15日 15時) (レス) id: d0864ff377 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - 麗さん» はい、麗さんこんにちは！(^^) リクエスト有難うございます！喜んでお受けします！ただ、日替わりの消化も済んでいないので完成は少し先かも知れません…どうか気長にお待ち頂ければと…！ (2019年9月15日 13時) (レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
麗 - こんにちは(｀・ω・´)麗です(｀・ω・´)……はい、こんにちは！あの、リクでウルフとジョーカーが夜の散歩をしているお話を書いて下さい！それを夢主ちゃんが見ちゃった……的な？ (2019年9月15日 12時) (レス) id: d0864ff377 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - ロランさん» いえいえ、喜んで頂けたみたいで、とても恐縮です…！ 此方こそリクエスト有難う御座いました！ また機会があれば、よろしくお願いします(^^) (2019年8月21日 16時) (レス) id: a34c130848 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：チイチ | 作成日時：2019年1月19日 0時
