出会う。 ページ4
＊
異界の戦士達が集まり、競い合うという世界に、僕は呼ばれた。
─いや、正確には僕という存在が呼ばれた。
マルスという青年は今でも、あの戦の世界で戦い続けている、或いは王として責務を果たしている。
今ここにいる僕は、マルスの容姿を正確に模したフィギュアという物に、マルスの魂をコピーした物…だという。
そんな事を聞いたところで、僕は僕でしかないのだけれど。
「やあ、皆。お待たせしてすまない。そして、応じてくれて有難う。私はマスターハンド。今はヒトの姿を取っているが、普段は、まあ、うん。少し違う見た目だ。
いや、そこはどうでもいいか。うん。取り敢えず、私のことはこの世界を保つ大事な存在、とでも覚えてくれ。」
僕の他にも、十数人。皆一様に同じような表情で、そのマスターとやらの話を聞いていた。
一言で言えば、『胡散臭い』。それに尽きる。
へらへらとした笑い方も、どこか読めない表情も、全てが。人の本質を見る目だけは確かだと自覚している自分には、そのヒトのようなものはどこか薄気味悪かった。
「屋敷の皆─メンバーには、キミ達が来ることはもう伝えてある。この後は食堂で、歓迎会を兼ねた食事会をする予定だよ。」
さあ、ついてきて。
そう言って足を進めだしたそのヒトに、僕らは少しだけ顔を見合せ、そうして、着いていく決断を下した。
＊
「ルイージ！キミも来たんだね！それにピーチ姫も！」
「に、兄さぁん…！こここ、怖い人ばっかりだったよ…！」
「あらマリオ、アナタ先に来てたのね！」
「ワガハイを無視したのはワザとかマリオ！」
「よぉフォックス。お前も居たのか。」
「やあファルコ。やっと故郷の知り合いが来てくれて心強いよ。」
周囲で交わされる親しげな会話が、少しだけ、胸に痛い。
此処に、自分の故郷の知り合いは居なかった。強いて言うならロイという名の青年が、自分と似通っているか。
「お待たせ皆。さあ、座って座って。─ほら、キリアも。」
「ぇ、と…」
「あ、キリィ！こっちこっち！」
「ぁ、カービィ…うん、」
ふと、視界の隅を横切った影。
僕はその影─少年の姿を認め、おや、と思う。
その彼は、此処に居る誰よりも静かだった。
まるで、凪の海のように。雪に沈む夜のように。ただ、そこに在るような子だった。カービィという子に服の裾を引かれ、彼の隣に座っている。
…食事が落ち着いたら、声をかけてみようか。
─思えば、僕と彼の初めはそんなものだったのだ。
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作者名：チイチ | 作成日時：2019年1月6日 4時
