さよなら、さようなら。 ページ2
＊
もう、僕は疲れ切っていたのだ。
全てを知ったのに、話せないもどかしさ。
全てを知ったからこそ、鈍ってしまった決意。
…その全てに疲れて、疲れ果てて。
だからこうなってしまうのはきっと、時間の問題だった。
「─キリア？」
嗚呼。これは、彼の声。
きっと貴方のことだから、僕を心配してくれているのだろう。貴方は結局、支配から返ってきた後は、また何やかんやとカービィと共に僕の世話を焼いてくれたのだ。
…でも。ごめん、ごめんなさい。
もう僕は、本当に、どうしようもなく疲れてしまった。
誰かに甘えたい。思い切り甘やかしてくれる誰かに、全てを委ねてしまいたい。
…その誰かを考えた時。頭に浮かぶのは、彼でも、貴方でもなくて。
記憶にしてみれば僅かなはずの、
─ああもう、本当に。僕は、どうしようもなく馬鹿だなあ。
「…キリア…？どうして…キミは、何故─」
「…マルスさん。」
僕もう、疲れてしまいました。
もうこれ以上、僕は耐えられない。だから、ねえ。もう良いでしょう？
「僕は─」
僕がそう言い終えると同時に、貴方の目が動揺と、哀しみに揺れる。
周りが、ざわざわと騒ぎ出す。でも、僕にはそんなもの聞こえていなくて。
「─だめ、だ。それはだめだよ、キリア。」
震えた声が、僕を引き止める。
背を向けた筈の僕の足が止まったのは、貴方が僕の手首を掴んだから。
ぎり、と音が鳴るくらい強く手首を掴む手は、酷く冷え切っていた。
「…マルスさん。」
「どうして…だって、カービィ君もずっと、キミとここまで来たじゃないか。なのに、どうして今更、そんな」
「僕は、ずっと思っていました。─疲れました。ただ、それだけなんです。」
「それだけ、って…だってキミは一度も、そんな…それに、アイツにつく理由なんて無い筈─」
「…ああ、そういえば、言ってなかったですか。なら、今言います。」
─僕、あの
周りにも聞こえるように、比較的大きめの声で言う。
途端、ぴたりとざわめきは止む。手首を掴む彼の手の力も、僅かに緩んだ。
思い切り、手を振り払う。
「─さよなら、マルスさん。」
「キリア！」
あの人の声に背を向けて、僕は先の無い路へと足を踏み出した。
─これで、良かったんだ。良かったんだよ。
そう、思っている筈なのに。
どうしてか、目から溢れる雫を止めることが出来ないのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：チイチ | 作成日時：2019年1月6日 4時
