《スマブラSP》やぁやぁ、はじめまして！《亜空の使者編Ⅱ》 (ページ10)

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　IV．廃棄場行きの出来損ないページ10

─荒涼とした大地を、風が吹き抜ける…と、突如として大地の一部が震動した。それは、広い荒野の中のほんの少しの範囲で起きた揺れだった。生命のほとんどいない枯れた大地で、それを気に留める者もまたいなかった。

『…ソレデハ、後ハ頼ミマシタヨ。』

　そう言い残し、深緑のローブが離れて行くのを、大地に銀の球体と共に残された２体のロボットが頷きながら見送る。

　その場に２体と球体のみになると、沈黙が訪れた。けれど彼らにとって、沈黙は苦ではない。彼らは元々、起動しなければ沈黙を常とする生命体なのだから。

『…オマエハ、』

　─けれど、何事にも例外はある。これからまさに「命を賭して」命令を遂行する彼ら…少なくともここにいる２体は、最期に話がしたいと、そう自らの回路(こころ)が訴えかけたのだ。

『オマエハ、＂エインシャント卿＂ヲドウ思ウ？』
『ドウ、トハ』

　小さく機械音を響かせ、右のロボットが首を傾げる。その様子にまるで苛立つかのように、左のロボットが排気音を鳴らした。

『私達ハ、＂リーダー＂ノ命ニ従ウヨウニ、プログラムサレテイル。ダガ、卿ニ逆ラッタ者ハイナイ。タダノ一人モダ。』
『ソウダナ。私ノ回路モ、拒絶反応ヲ示シタ事ハ無イ。』
『…コレハ、推測ニ過ギナイガ。エインシャント卿トハ、私達ノ─』
『仮ニ、』

　左がその言葉を言い終わる前に、右が声を上げる。それはまるで、その先を言うなと、聞きたくないと拒むかのように。

『仮ニ、ソウダトシテ。─消エ逝ク我ラニハモウ、何ノ意味モナイ事ダ。』

　そうだろう、と右が問う。無駄や余分をなるたけ排斥し、利便性を追求してきた彼らにとって意味も無いことの究極とは即ち─感情(バグ)だった。

『…ソウ、ダナ─』

　それきり沈黙を決め込んだ右へ、一度自分の眼(アイ)を向けて。溜息のように長く細い排気音を一つ漏らし、左が呟いた。

　─そう。きっと、この得体の知れない感覚こそが感情(バグ)なのだ。それを抱いてしまった私達(不良品)は、こうして使い捨てられて然るべきだ。

　腕(アーム)を挿入する。がちりとロックのかかる感覚。後退し、球体を割り開く。終わりの電子音と共に、エネルギーが膨張していく。

　─だが、もしそうであるのなら。自分は、不良品で良かった。

　世界を食い潰す衝撃に、意識が途切れるその瞬間まで。不良品(仲間)の彼らは、もう二度と会うことの無い＂リーダー＂を想っていた。