《スマブラSP》やぁやぁ、はじめまして！《亜空の使者編Ⅱ》 (ページ5)

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　ⅩIV．弱虫という名の逃亡者ページ5

ざあざあ、ざあざあ。

雫が叩きつける。雫が流れ落ちる。

ざあざあ、ざあざあ……

＊

「ワッハッハァッ！見つけたぞ！」
「ッ！？」

　それまで2人分の足音だけだった空間に、突然割り込む大きな声。驚いて足を止めたのは、手を繋いでいた彼も同じだった。

「誰だ！」
「ん～？お前、このオレ様を知らないのか？」

　手を解いたネスが、1歩前に出て睨み付けながら叫ぶ。
　舗装された道を突き破って聳え立つ巨石の上。曇天を背景に、丸々としたシルエットが立っていた。彼と同じように、ボクもソレを見遣る。…だけど、その瞬間。

「ぅ…」

　─足が、竦んだ。

「まあ、オレ様は心がムチャクチャに広いから教えてやろう…オレ様は、ワリオだ！」
「…そのワリオさんが、何の用？」

　ボク達急いでるんだよね─言いながら、一瞬視線を向けられる。けれどボクが何か言う前に、彼はまた男を睨んでいた。…さっきよりも、ボクの前に立って。まるで、ボクを守ろうとするみたいに。

「カ～ッこれだから子どもは！…まあいい！お前達はどうせ、ここでフィギュアになるんだからな！」
「…何だって？」
「それはお楽しみだ！…そうら！」
「─！」

　男の言うことはよく分からなかった。それは彼も同じみたいで、訝しげにしていたけれど─男が武器みたいな物を構えると同時に、彼は突然駆け出した。

「っ、と…！」
「ちょこまかしやがって…大人しくしろ！」
「誰が、する、もんかっ！」

　武器から出る、黒いビーム。何回も放たれるそれを、ネスは全て躱していく。…凄い。ボクにはあんな事─

「チィッ…もういい！まずは…」
「ッしまっ─リュカ！」
「……え？」

「そこのオマエからだぁっ！」

　─時間が、止まったようだった。

　向けられた武器。動かない足。近づく足音。見下した笑み。触れた掌。突き飛ばされる体…

　…動かなくなった、彼。

「ぁ、」

　脳裏を過る。体を赤く染めて動かなくなった、ボクの─

「お友達を守るとは…くぅ～っ！泣かせるじゃねえか！…オイ、お前！」
「ぁ…ネス…おかあ、さ…！」
「なんだぁ？…フン、まあいい！見逃してやってもいいが…お友達と一緒がいいか？」
「─ッ！」

　言葉と一緒に向けられた、その目。それを見てしまったボクはもう、だめだった。

　震えて馬鹿になった足を必死に動かして、立ち上がり、駆け出す。鳴り出す雷も、降り出した雨も振り切るように。何もかもから逃げ出したボクの耳の奥に、笑い声が張り付いていた。