《スマブラSP》やぁやぁ、はじめまして！《亜空の使者編Ⅱ》 (ページ18)

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　ⅩⅡ．想いも敵も、一刀の元にページ18

『っぐ、…！』
『ッアイク！！』

　─高く、高く。
　後ろは振り返らず。ただただ、前へ、上へ。

　今までの何よりも熾烈な戦いを経て、遂に最奥に囚われていたパルテナとベヨネッタの2人を取り戻した僕らは、最後の決戦に臨んだ。正気を取り戻したマスターとクレイジーの手により、上塗りされた偽物の世界が引き剥がされ─その向こうに鎮座していたのは、互いに睨み合いを続ける2体の化身達。
　上へと逃げていく2体を追って、僕らは時空の歪みに崩れていく世界に残った僅かな足場を辿り始めた。…いつもは僕らの事を終点で待つばかりのマスターも、この時ばかりは強力な援護に回ってくれていた。

　文字通りの、全身全霊。持てる此方側の戦力全てを投入し、相手もまた大人しく僕らが登ってくるのを待っている訳では無かった。今もまた、ダーズの触手が的確にアイクの腹を抉り、苦しげに呻いた彼は戦闘不能になったとして、自動的にマスターの元へ離脱して行く。

『ッこんな、所では…！』

　─おわれない。そう、だってまだ、自分は彼を助け出していない。世界を救えていない。何をも、成していないのだから。

　震える膝に力を入れ、さらに一段上へ飛び上がる。自身を鼓舞する為に、仲間を叩き落とした黒い目玉を睨みつけようと、顔を上げた時だった。

『─！』

　視界の端に過ぎった黒い閃光に、すぐ様刀身を身体の前へ滑らせる。ぎぃん、と耳障りな音が鳴ると同時に身を翻し、足場を上った位置から見下ろした、その影は。

『そんな、』

　キリア、と。音にならない言葉が消える。
　キーラやダーズの使役する、爆弾とも呼ぶべきもの。僕らの姿や戦い方をコピーし、時間が経過すれば、極めて高威力の衝撃波と共に爆散するそれ。
　けれど、目の前に立つものは。ダーズの使役する証…黒に満ちたその姿形は、紛れもなく＂彼＂のもので─心臓が、どくりと音を立てた。

　影が、足場を蹴って飛び上がる。剣を振り上げたそれを、僕は─

＊

「─ッ！」

　あの時と同じく。黒い影を、一刀の元に切り伏せた。
　ダーズ。彼の母親の亡骸。キーラと同じく、あれは自らの子であった彼を既にもう、駒としか見ていなかった。

　─許さない。許せる筈が、無い。ただ、あと一度だけと肉親の温もりを求めた彼は、手酷く扱われ、そうして最期は。

「─マルス？」
「…何でもないよ。さあ、行こうか。」

　切り伏せた、あの日を彷彿とさせる感触。不安が増していくのを、気の所為だと誤魔化した。