《スマブラSP》やぁやぁ、はじめまして！《亜空の使者編Ⅱ》 (ページ17)

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　ⅩⅠ．あの怨恨は今も尚ページ17

─さて、どうするかと。何処か機嫌が良いとすら思える様子で、エインシャント卿は一人思案する。

　あの青年─アイクが彼らと合流する所までは、想定内だった。彼らは、どこか不思議なまでに運命を引き寄せるのだから。

　だが、問題はその後だ。まさか、アレを─亜空間爆弾を、起動不可能にするとは。

『─羨マシイ限リデスヨ。』

　…本当に、そう思う。あの様に、物理的にも─そして、精神的にも一刀両断を成す覚悟と決意、強さが、もし自分にもあったのなら。…そこまで考えて、その思考回路をシャットダウンする。どうあれ、それは叶わぬ夢に過ぎないのだから。

　このまま逃げる先には、深く切り立った崖がある。追尾不可能と言う訳ではなく、回り道をすれば追いつく事も可能ではあるが、宙を進むことの出来る自分には、どうあれ彼らは追いつくことは出来ない。であれば、このまま真っ直ぐ逃げてしまえば良い─のであったが。

『……コレヲ、イツマデモ持ッテイルノハ。』

　─苦しい。回路の奥が軋むあの感覚に、握り締めたそれ─少年の力を借り受けて作り出した兵装に意味も無く視線を落とす。

　……ああ、そうだ。もう、いっその事手放してしまおうか。
　既に、この兵装に込められた光の力は使い切られている。で、あるならば。残るのは、純然たる闇の力。…今の自分が、属する力。

『…ダメデスネ、私ハ。』

　言いながら、随分離れてしまった3人の影へ向け、それを放り投げた。軽やかに放物線を描きながら、大した重さもないそれが、やがて見えなくなる。

　─知っている。わかっている、のだ。自分がどうしようもなく愚かしくて、臆病で、弱いということなど。

『ソレデモ、』

　まだ。ここで、こんな所で、自分が奴に処分される訳には、いかない。

　勢いをつけ、卿が速度を増したその背後にて。解放された闇の力が、迫る3人の戦士の姿を捉え─ぐにゃりと、その姿を歪めた。

＊

「ッ─！？」

　それはまるで、冷水を頭から浴びせ掛けられたかのような感覚だった。

　遠ざかる、エインシャント卿の背中。生身の3人ではどうする事も出来ず、迂回しようとした矢先の事だ。突如背後に迫った強烈な殺気に、3人は一斉に振り向き─最も早くその姿を目にしたマルスの思考回路は、一瞬あまりの事に停止した。

　黒紫の影。人型─それも、どうやらここにいる3人と同じ。そうして、何よりも濃く感じとれるモノ。

「─ダーズ、」

　…ふつりと、胃の奥が煮え立つようだった。