《スマブラSP》やぁやぁ、はじめまして！《亜空の使者編Ⅱ》 (ページ14)

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　Ⅷ．無知を知り、敵を知るページ14

「…何処なんだ、此処は。」

　─時は、2人の剣士が共闘を始めたその時から少しばかり遡り。荒野の一角で、一人の青年が困惑の声をあげた。
　無理もない。青年の認識では、直前まで自分は仲間達と─傭兵団の皆と共に居たはずなのだから。既に今意識を持つ自分が実はコピーされた存在などとは、露ほども思っていない。

　ふう、と大きな溜息を、埃っぽく乾いた空気の中へ溶かす。─青年は、小難しく考える事は苦手な部類であった。団長という立場ではあれど、戦術的なことは専ら、団の軍師の担当だったのだ。

　─だが。青年は、英雄と後に呼ばれる者達の殆どがそうであるように、不思議なカリスマ性があり…同時に、運命を引き寄せる強い力の持ち主でもあった。
　その彼の、長い戦いの中で培ってきた─身に刻まれた経験の全てが。青年の今立つ大地が、見知ったそれとは異なるものであると告げていた。

「─何かを得るには。進むしか、ないということか。」

　今までの自分の道が、そうであったように。何も知らぬまま放り出された自分の手元に唯一残っていた、使い込まれた大剣─ラグネルと呼ばれるそれを見つめ、青年は自らに言い聞かせるよう、そう呟いた。

「…ッ！！」

　─歩み出そうとした青年の目が、僅かに見開かれ。次の瞬間、黄金の刀身が轟音を立て、背後を一閃した。実弾では無い、レーザーの弾。それを寸分違わず刀身が捉え、射線は明後日の方向へ。
　大剣を片手剣であるかの如く軽々と振り抜いた腕をすぐ様引き戻し、青年は、砂埃の舞う景色の向こうを鋭く睨む。やがて、青年の耳には聞き慣れない音─機械の駆動音と共に、それは姿を現した。

『…流石、トイッタトコロデスカ。』
「お前は、誰だ。」

　宙を駆る飛行ユニットに座す、深緑のローブ。機械的な声。青年には知る由もないが、それは間違いなくエインシャント卿だった。

『…私ハ、エインシャント卿。貴方…イエ、貴方達ノ敵。』
「敵…？」
『貴方ハ迷ッテイルヨウデスノデ、ヒトツ助言をアゲマショウカ。』

　─私ハコレカラ、＂コレ＂ヲ作動サセマス。

　言って、見せつけるように揺すられた、銀色の球体。それを目にした瞬間、何故か、青年の背筋に冷たいものが伝った。

『ソレデハ、』
「っ、待て！！」

　ふわりと飛び立つ姿を追うようにして、青年が駆け出す。─兎に角、あの球体を作動させては、いけない。

　あっという間に遠ざかるローブ姿に歯噛みしながら、青年─アイクは、独り荒野を駆けた。