�� ページ4
─『最期まで、傍にいて欲しい。』
そう言った彼が、今までに見た事が無い、酷く怯えた顔をしていたから。
とても、見ていられなくて。その言葉の意味を深く考える事ができないまま、私は彼を─クラウドさんを、許した。……受け入れて、しまった。
一体、何をどこで間違えたんだろう。
そう、ぼんやりと考える。……これは、現実逃避というやつだ。
分かってる。知っている。でも、それでも─今の私は、私の見ているものを信じることが、どうしても出来なかった。
「……A？」
低い、凪いだ声。耳朶を震わせたその声に、明後日の方向を見ていた視線をのろのろと戻す。
ざり、と乾いた地面を踏みしめながら近づく彼が目に入る。砂埃が入ったのか、目が潤む感覚があった。
かち、と彼の碧眼と視線が絡み合う。刹那、余計に視界が歪み出した。
「どうした、A。何かあったか、」
乱暴に、服の袖で目元を拭う。それを止めようとする彼の、頭上からの優しいその声と先程まで見ていたもののアンバランスさを思い出して、次は吐き気が込み上げた。
……ああ、きもちが、わるい。
「やめておいた方がいい。そんなに強く擦ったら、目が腫れるぞ。」
「……いい。腫れたって、べつに、」
「……Aが良くても、俺は良くない。身体は大事にした方が良いと、前に言われたんだろ？」
そう、言った人を。アナタは、ころしたでしょう？
そう言いたくて。でも、ひくついて震える喉から声は出なくて。
厳密には、死んではいないんだろう。でも、私からすれば、例え手順を踏めば元に戻ると分かっていても─引き裂かれた身体から鮮血が吹き上がり、ゆっくり地に崩れていく様は、死と同義だった。
彼らの、彼女らの、今際の際の表情が今でも、瞼の裏に焼き付いている。
何故、どうしてと。向けられた理由のない悪意と凶刃に、誰もが困惑したまま、その活動を止められて行った。
それを、見ていた。否、見せられていたという方が正しいか。
最初こそ、その腕を掴んだ。止めようとした。
でも、彼はまるで人が変わったかのように、ファイターが…誰かが現れる度、その刃を振るった。そうして、全てを沈黙させた後、また私の手を引いて前へと進んだ。
……その刃が、私自身に振るわれることは決して無かったけれど。
無言の威圧が、私の脚を彼の後ろという位置に縫い付けて、逃がさなかった。逃げられなかった。
ひとつ、立ち止まる度。私の手を引く彼の手は、赤く染まっていった。
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チイチ(プロフ) - 降魔さん» 降魔さん、こんにちは(^^)コメント有難うございます！悲鳴が出るほど喜んで頂けたのなら、書き手としてもこれ以上ないくらい嬉しいです…！前にブラックピットを楽しみにしているというコメントを頂いてから、私自身書くのが楽しみでした！これからも頑張ります…！ (2019年12月17日 1時) (
レス) id: cd3ca817f7 (このIDを非表示/違反報告)
降魔(プロフ) - ひぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!! ブラックピットやぁぁぁぁぁぁぁ!!!! チイチさんて天才っスよね……!!! これからも頑張ってください！ (2019年12月16日 18時) (レス) id: 6d6843d9f1 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - 水城さん» こんにちは！コメント有難うございます…！コメントの全てが私には余りにも勿体ないものばかりで恐縮です…！ちょっと嬉し過ぎて文脈がおかしいかもしれないですすみません…！これからも意欲の続く限り執筆していきます…！本当に有難うございます！ (2019年12月15日 15時) (レス) id: cd3ca817f7 (このIDを非表示/違反報告)
水城(プロフ) - いつもチイチ様の作品を拝見して、文章の構成や内容の素晴らしさなどに圧倒されている者です。チイチ様の描く人物たちが本当に好きで、この度マルス様の話が追加され耐えきれずコメントしてしまいました……これからもお身体を大切に、作品をつくって下さると嬉しいです (2019年12月15日 8時) (レス) id: 29a05cdac9 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - あるふぁさん» こんにちは！コメント有難うございます(^^) 楽しみと言って頂けて本当にとてもとても嬉しいです…！それだけに長らくの間更新停滞してしまった事が申し訳なく…年末にかけてどんどん更新していくので、宜しければこれからも見てやってください…！ (2019年12月11日 0時) (レス) id: cd3ca817f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チイチ | 作成日時：2019年8月14日 2時
