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じわり、じわり。
自分の身体を、心を、何かが蝕んでいくのを感じていた。
生命の危機は、微塵も感じることは無かった。けれど、日を追うごとに強くなっていくものがあった。
─それは、《疑念》。それだけだった。
けれど、それは。自分という存在にとって何よりも弱点たり得るものであるのだと、俺は知っていた。
─周りの視線が、質量をもって自分を押し潰そうとしているようだった。
肚の内に隠したモノを、誰もが責めているようだった。
周りの全てが、疑わしく思えていった。
……ああ、疲れた。もう、嘘でも本当でも、どちらでもいい。ただただ、疲れた。
何もかもを疑うことに疲れた。疑う自分の気持ちを疑うことに、疲れた。
疑って、疑って、疑い尽くして。…遂にくずおれそうになった自分を、支えたものは。
─『…分かり、ました。私は最後まで、クラウドさんの傍に居ます。』
…ああ、なんだ。自分には、最後までそばに居ると言ってくれた人が、居たじゃないか。
そう、理解した瞬間。理性がギリギリで堰き止めていたモノが、音を立てて、ぶつりと途切れた。
(ああ、そうだ。疲れたのなら、もう、嫌なのなら。すべて、壊して、無くしてしまえばいい。)
(何も、怖がることは、恐れることは無い。だって自分には、彼女が居るのだから。何があろうとも傍に居ると、そう言ってくれたのだから。)
……これは、この感情は、愛情では無いんだろう。親愛でもなく、もっと独善的で、醜いものだ。
そう、そうだ。認めよう。自分は、彼女に─Aに、心底から依存していると。
彼女が、己の弱音を掬いとってくれた日。
受け止めず、ただ零れる様を傍観して、「できない」と言う選択肢も、あったというのに。彼女はそうはせず、俺の弱音を、子供じみた我儘を、その手で掬いとってくれたのだ。
─そうだ。きっと、その日から。
…特別でなくとも胸を張っていられるその強さを、遠目に羨むだけだった彼女。
嘘の殻の内側にいる本当の自分と、似ているようで全く違う高みに居ると思っていた彼女が、最後には自分と同じ場所まで来てくれると、堕ちてくれると言った。
それは、酷く背徳的な誘惑だった。人間風情が、天使にその羽根を手ずから引きちぎる事を許されたかのような。
…拒絶することも出来たはずだ。けれど、そうしなかったのは。
天使が─彼女がその羽根で再び、手の届かない場所に行ってしまう…見放されるそのことを、自分が何より恐れていたからだった。
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チイチ(プロフ) - 降魔さん» 降魔さん、こんにちは(^^)コメント有難うございます！悲鳴が出るほど喜んで頂けたのなら、書き手としてもこれ以上ないくらい嬉しいです…！前にブラックピットを楽しみにしているというコメントを頂いてから、私自身書くのが楽しみでした！これからも頑張ります…！ (2019年12月17日 1時) (
レス) id: cd3ca817f7 (このIDを非表示/違反報告)
降魔(プロフ) - ひぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!! ブラックピットやぁぁぁぁぁぁぁ!!!! チイチさんて天才っスよね……!!! これからも頑張ってください！ (2019年12月16日 18時) (レス) id: 6d6843d9f1 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - 水城さん» こんにちは！コメント有難うございます…！コメントの全てが私には余りにも勿体ないものばかりで恐縮です…！ちょっと嬉し過ぎて文脈がおかしいかもしれないですすみません…！これからも意欲の続く限り執筆していきます…！本当に有難うございます！ (2019年12月15日 15時) (レス) id: cd3ca817f7 (このIDを非表示/違反報告)
水城(プロフ) - いつもチイチ様の作品を拝見して、文章の構成や内容の素晴らしさなどに圧倒されている者です。チイチ様の描く人物たちが本当に好きで、この度マルス様の話が追加され耐えきれずコメントしてしまいました……これからもお身体を大切に、作品をつくって下さると嬉しいです (2019年12月15日 8時) (レス) id: 29a05cdac9 (このIDを非表示/違反報告)
チイチ(プロフ) - あるふぁさん» こんにちは！コメント有難うございます(^^) 楽しみと言って頂けて本当にとてもとても嬉しいです…！それだけに長らくの間更新停滞してしまった事が申し訳なく…年末にかけてどんどん更新していくので、宜しければこれからも見てやってください…！ (2019年12月11日 0時) (レス) id: cd3ca817f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チイチ | 作成日時：2019年8月14日 2時
