幻想戦歌6

act17-11 ページ39

〜伊野尾side〜




男性が向かった場所は、段ボールが敷いてあり、辺りが木で覆われていた



伊野尾「ここは？」

男性「おっちゃんが暮らしている場所さ」

伊野尾「・・・おっちゃん、何してるの？」

男性「うーん・・・、路上生活者・・・かな？」

伊野尾「・・・僕も一緒、帰る家がない」

男性「そうか・・・、君、名前は？」

伊野尾「・・・伊野尾慧」

男性「慧・・・、決して贅沢はさせてやれないが、ここで一緒に暮らさないか？」

伊野尾「・・・・・」

男性「あはは、すまない、そうだよな、会ったばかりの怪しいおっちゃんが何言ってんだか」




まだ彼を信用しきれていなかった僕は、その場を離れた






数日後、その人はまた僕の前に現れた



男性「慧、元気か？これ、食うか？」


その人が差し出したものは、未開封のお菓子だった


男性「賞味期限が切れてないのに捨ててあったんだ、酷いもんだな」

伊野尾「・・・おっちゃんが食べなよ」

男性「ありがとう、優しいんだな、でもおっちゃんはもうお腹がいっぱいなんだ」

伊野尾「・・・・・」

お菓子を受け取り、封を開けて空腹を満たした

伊野尾「・・・おっちゃんはいつも一人？」

男性「ああ、そうだな・・・」

伊野尾「寂しくないの？」

男性「寂しいけど・・・仕方ないさ」

伊野尾「・・・・・」


この人の支えになってあげたい


ずっと他人との関わりを拒んできた僕は、なぜかそう思っていた



伊野尾「おっちゃん、僕、普通じゃないんだ」

男性「ん？」

伊野尾「不思議な力を持ってるんだ、それを知ったらきっと・・・僕のこと嫌いになる」

男性「ならないさ、普通じゃなくても慧は慧だ、おっちゃんは慧が好きだぞ」

伊野尾「・・・本当に？」

男性「ああ」



嬉しかった

初めて、自分を受け入れてもらえた




それから僕は、おっちゃんと一緒に暮らし始めた

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