逢魔時 〜時を越えた絆〜5

act12-12 ページ2

〜増田side〜




娘と共に過ごし、月日が流れていく



こうして一緒にいる時間が、当たり前のような、特別なような・・・



この先もずっと、こんな日々が続いていく




そう信じて疑わなかった







ある日、娘はどこか不安そうに空を眺めていた



増田「どうした？」

少女「！え、えっと・・・」


すぐに答えないことを不思議に思ったが、彼女の悲しげな表情に何も言えなかった


少女「鬼さん、少しの間だけここで待っててくれる？」

増田「どういうことだ？行きたい場所があるなら俺も行くぞ」

少女「ごめんね、私一人じゃないと駄目なの」

増田「何言ってんだ？一緒にいると約束しただろ？」


約束、と口にすると、娘は申し訳なさそうに俯いた


少女「・・・お願い、一人で行かせて」

増田「どうして・・・」

少女「すぐに戻ってくるから！絶対だよ！」

増田「・・・分かった、出来るだけ早く戻ってこい」


あまり娘を疑いたくなかったため、俺は彼女の頼みを聞くことにした



少女「・・・ごめんなさい」



娘は徐に、何かを取り出した




少女「・・・これ、鬼さんにあげる」


そう言って娘が手渡したのは、大切にしていた青の勾玉だった


増田「あげるって・・・、大切な物だろ？」

少女「そうだよ、だからこの前みたいに落としたりなくしたりしないように、鬼さんに持っていてほしいの」


真っ直ぐ俺を見つめて頼むものだから、断ることが出来ない


増田「・・・仕方ねえな」

少女「ありがとう！帰ってきたら返してね！」

増田「応！」



娘は満面の笑みを見せると、元気に駆け出した



少女「じゃあ、行ってくる！」



振り返って大きく手を振る


俺も手を振り返すと、娘は前を向き走り去った









すぐに戻ってくると思っていた娘は、いつまで経っても帰ってこなかった




何日も、ずっと・・・







虚無感に襲われ、涙が零れそうになる



それを、ぐっとこらえた







絶対に泣かない




それが娘と交わした約束だから―――――

act12-13→←4のあらすじ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す