逢魔時 〜時を越えた絆〜

act1-1 ページ3

流れていた曲が終わり、私も動きを止める


滑らかに、自然に、ゆっくりと・・・





一呼吸置き、姿勢を正す


正面で座って私を見ていた数名の女性の方を向き、深くお辞儀をした



直後、パチパチと手を打ち合わす音が響いてきた


顔を上げると、皆さんが笑顔で拍手をしていた



・・・一人の女性を除いて



女性1「素晴らしかったですよ、巫女様」

「ありがとうございます」


再び、私は感謝の意を込めて頭を下げた



頭を上げたと同時に、拍手をしていなかった女性が立ち上がり、私に歩み寄ってくる




？「Aさん、後半、足の力が少し緩んでいますよ、最後まで気を抜いてはいけません」

「・・・はい、お母様」

女性2「そんな、先代巫女様、いくらなんでも厳し過ぎでは・・・」

「いいえ、お母様の言う通りです」


心配そうに見つめる女性に、私は真剣な眼差しでそう言った


女性2「A様・・・」

「私はまだ巫女になりたてで、とても未熟です、『神楽(かぐら)』も完璧には程遠いです」

女性3「そうでしょうか？A様は歴代最年少で巫女になったのに、非常に立派ですよ」

女性4「ええ、巫女を継承してまだ間もないのに、神楽だってここまで美しく・・・」

「年月は関係ありません、私自身が、巫女として足りない部分が自分にあると感じているのです」


謙遜ではなく、本当にそう思っている


勿論皆さんの気持ちは嬉しいし、想いを否定している気がして申し訳なく感じた



だけどやはり私は、今が完璧だとは思わない



母「向上心を忘れてはなりませんよ、Aさん、貴女ならもっと美しく、優雅に神楽を舞うことが出来るでしょう」

「はい、お母様、これからもご指導よろしくお願いします」

母「勿論です、『千早(ちはや)』を授けるまで、手は抜きませんよ」





お母様は妥協を許さない


それは、神楽という舞だけでなく、日常生活のあらゆることにおいてもだ




厳しいけれど、それは私を想ってのこと


私を巫女として立派に育てるために、必要なこと


そんな厳しさの中で時々垣間見せる、母としての優しさも実感している


お母様の愛情に、私はちゃんと気付いている




だから私は、お母様が大好きだ

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