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py「まさかほんとにのこのこ敵に会いにくるとは思わなかったなぁ」

 ナイフを持って追い詰められ、逃げ場を無くして生を諦めた時。目の前にいた男の首が音もなく弾け飛んだ。
 鼻をつく鉄の匂いに辺りを見回すと、何階建てか数えるのも億劫な高層ビルの割れた窓から彼が手を振っていた。
 頬を湿らせた赤を拭って、処理の間に合わない脳が痛みを訴え始めた時、スナイパーライフルを掲げた彼に手招きされていることに気が付いて。
 べちゃべちゃと足跡が私を追って、ビルの入口まで繋がる。
 エレベーターが動かないことに落胆しながらも彼の元まで向かうと、呆れたような目が私を待っていた。
「そんなこと言って、銃足元に落としてる時点で私と戦う気ないんじゃん」
「そりゃ俺も顔馴染み殺すのはなぁ」
「そう。ありがとうね、さっきは」
「別にいーけど。もうちょいこっち来れば?」
「あ、ちょっと……」
 返事も聞かず、その長い腕に閉じ込められる。安定した心音と煙草の香りに、張り詰めていた何かがぷつりと切れて、訳も分からず涙が溢れた。がたがたと震えだす足をそのままに、彼は私を座らせてより深く抱きしめる。
「よーしよし。もう俺がいるから大丈夫」
 信憑性の欠けた「大丈夫」にすら安心させられて、同時に「大丈夫じゃないこと」を認識せざるを得なくなった。
 掠れた慰めは嘘ばかり。そういうの、彼の方が苦手なくせに。

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すいみん。(プロフ) - こんな夜に死ぬ程泣いてしまいました。起きる頃には目が腫れていそうです。背景描写や細やかな心情描写が繊細で儚いのに粘っこく心に残る小説でした。解像度も高く本当に言ってそうorやってそうな行動ばかりで脱帽です。無理なさらず更新頑張ってください!! (1月13日 23時) (レス) @page20 id: f12e90341c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春告るる | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2023年10月13日 19時

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