- ページ19
- - - - - - - - - - - - - - - -
cs「おはよ、Aさ……」
机に白い花が咲いていた。
ごちゃごちゃとうるさい文字が踊っている。その上に凛として佇む一輪は、全てを跳ねのけるように堂々と、それでいて少しの寂しさを纏っていた。
口を噤んで席に着く。ただのクラスメイト一人。三十二分の一。日常に何の関係も無く、挨拶だけで終わるような。
放課後。上も下も空になった彼女の靴箱。日暮れの早い今日。校舎裏。泥まみれの指先を、凍てつくような水道水が洗い流していく。
いつか忘れる浅い傷。なのに、彼女の目が柔らんだ瞬間を、いつまでも忘れられないでいた。
何度擦っても汚れが落ちないまま。この上履きもきっと、正しい洗い方をしたら白に戻れるはずなのに、それを知ることすらしなかったのは俺だった。
- - - - - - - - - - - - - - - -
gk「……今頃どこにいんのかなぁ」
飼ってたメダカが死んだ。そんなような気持ちだった。
水槽を洗う時、ちょっとした不注意で排水溝に流れていくメダカを見るような。とりとめもない一瞬で。微かな不意打ちで。それでも特に、涙が出る訳でもなくて。
心の何処か、隠された場所がざらざらと撫でつけられる。それだけ。
朝、眠い目をこする。昼、友達と購買に行く。夜、電気を消してゲームをする。
生きていける。満足に、充分に、変わらず、生きていける。
なら、腕に抱えた水槽は。
転がる石は。揺れる水草は。
主役の帰りを待ったまま、嵩だけが変わるこの水槽は。
枯れてしまったら、どこに片付けるものなんだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すいみん。(プロフ) - こんな夜に死ぬ程泣いてしまいました。起きる頃には目が腫れていそうです。背景描写や細やかな心情描写が繊細で儚いのに粘っこく心に残る小説でした。解像度も高く本当に言ってそうorやってそうな行動ばかりで脱帽です。無理なさらず更新頑張ってください！！ (1月13日 23時) (
レス) @page20 id: f12e90341c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
