- vague ページ16
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いじめられっこになっちゃった
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gt「お前もう学校来んなよ」
彼はいつも言葉足らずだ。
古びたベッド。消毒の匂い。開かれたままの窓から、冷やされた空気が逃げていく。
この季節には似つかわしくないカーディガンを、彼の手が捲った。色の変わった箇所ひとつひとつを丁寧に、贖罪みたいになぞられる。
――逃げだしたい。
あの子たちからじゃない。彼から。彼から逃げたかった。見て見ぬふりをしてほしい。間になんて入らなくていい。ただの同級生なのに。何も関係ないのに。最後は的はずれな優しさだけ残して背を向けるくせに。
「……さわんないで」
ぱちん、と乾いた音が鳴って、蝉が私を罵っていた。
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tr「はい、手貸して」
貸す、の前に引っ張られる。それほどの音もなく、じり、なんて感触とともに煙が消えた。
熱くても痛くても、声を出せば怒られるから唇を噛む。
机には隠す気もさらさらないライター。床には液晶の割れた端末。
使い物にならない。例えば手足。例えば法律。例えば心。例えば関係。例えば先生。例えば指切り。
この教室にあるぜんぶ腐って、使い物にならない。
机の上で足を組む彼を見上げて、視線が絡み合う前に自分の手のひらへと逸らした。もう、この痕は消えないんだろうか。
痺れる指先をうごかして、握って、ひらいて。
腫れた頬が彼の手に包まれる。昔と変わらず暖かくて、なんだか無性に寂しくなった。
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py「なんで言ってくんなかったの」
授業終わり、体操服のまま制服に刺さった針を抜いていた。
わざわざ教室から出てこんなことをしているんだから、わかってほしいものだった。
「いっつも学校、さぼってるから知らないだけでしょ」
今日も彼からふわりと香る煙。結構周知の事実だよ、なんて付け加えてみれば、呼吸の音だけ大人しく床に座る。
「……誰」
「さーね。聞いてもわかんないんじゃない？」
指先から滴ったなんの価値もない赤色が、ぽたりと中途半端に白を染める。
「わたしも学校、さぼっちゃおっかな」
明日、これを着なくてもいい理由になるなら。
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すいみん。(プロフ) - こんな夜に死ぬ程泣いてしまいました。起きる頃には目が腫れていそうです。背景描写や細やかな心情描写が繊細で儚いのに粘っこく心に残る小説でした。解像度も高く本当に言ってそうorやってそうな行動ばかりで脱帽です。無理なさらず更新頑張ってください！！ (1月13日 23時) (
レス) @page20 id: f12e90341c (このIDを非表示/違反報告)
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