【wrwrd】悪役令嬢に転生したので回避しながら生きてみます

第四十四話「違和感」 ページ45

おかしいのだ。
チーノは幼少期にヒロインと出会っている。そしてロケットペンダントの写真は自分とヒロインが写ったもの。青年である今はヒロインを守る為に少しだけ護衛術も会得する。

そのはずなのに、彼はヒロインの名前も姿も性格も何も知らない。

自分は幼少期から一人だと言い
ロケットペンダントの写真は家族とのもの
護衛術なんか出来ない

全て違うのだ。

このゲームの始まりも、チーノと学園の入学式に行く所から始まる。だからメインキャラの中で一番最初にチーノと関わるから、間違いはないのだ。

「貴族のお嬢様がそんな一般市民に何の用なん？」

『…何度も言っているでしょう？幼少期に出会ったことがあるから、もう一度話したい、と。』

ヒロイン捜索にあたって私がチーノについた嘘は
「幼少期にパーティで出会った気の合う平民を探している」
というちょっと無理があるもの。

「ふぅん。ま、報酬は貰っとるからちゃんとやるけど。次は絶対言われた人物の写真撮ってくるから！待っとってな！」

『あんまり無理はしないでね。』

私の記憶違いじゃなければ、チーノに言った条件でこの世界にヒロインは存在している。異世界転生をしたのは一応私だけだ。ヒロインは、してないはずだ。

「A様！チーノ！ひとらんがタルト焼いてくれたで！」

遅かったので心配したんだろう。コネシマに呼ばれた。タルトがあるということはオスマンもいるんだろう。彼は暇さえあれば家か、グルッペンの家にいる。

「ひとらんさんのタルト！？ちょ、すぐ行きます！」

チーノはコネシマを通り抜けて先にみんながいるであろう中庭へ行ってしまった。

「A様！行くで！」

『ええ、すぐ行くわ』

でも今は、ヒロインのことなんか考えなくてもいいか。


「入学おめでとう」

『いいんですか！？』

いつものティーパーティ用のセットに思い思いの場所に座るキャラ達。私は空いてる席が真ん中しかなかったのでそこに座った。そしたら、ひとらんらんがケーキをくれた。

「ちょ、ひとらんずるいって！俺にもちょうだい！」

「マンちゃんは待ってる間に色々食べたでしょ？これはAちゃんの入学祝いだからダメだよ」

「めう〜！！」

道理でお菓子の数が少ないと思った。因みにひとらんらんの作るケーキはパティシエ並に凝ってて美味い。

『ありがとうございます！』

考えすぎた後に食べる甘いものが一番美味い。

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