Pure Love (ページ42)

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「僕は、とんでもない子と付き合ってるみたい」

抱きしめたまま、ジェノさんがポツリと呟いた。
なんだか少し嫌な予感がして、抱きしめられている腕からやんわりとすり抜けて、顔を彼に向ける。
やっぱり、少し悲しい表情。そして数々のトロフィーや楽譜などの一面を見渡す。

「こんなに皆が羨むAに…僕は並べてるのかな」

悩まなくていいのに、切ない。だとしても、私はこういうと決まっている。

『並ぶも、下がるもそんなの必要ないよ。私は私、ジェノさんはジェノさん。アルバムの時熱意を持って挑んでるの知ってるし、生半可な気持ちでやってないでしょ。…そりゃ、音楽に対して適当にしてたら、私だって怒るよ。だとしたら、そもそも私の彼氏じゃないかも。私の彼氏、なんだよ？ジェノさんは』
「…ふふ」

私なりの慰めに、元気になったようでまた更にさっきよりきつく私を後ろから抱きしめた。

「A、言うようになったね」
『へへ、恋愛にはそんなことないけど、普段の私は自己肯定感高いからね。それに……こんなに私のことをドキドキさせるのも才能、かもよ』

ジェノさん以外にこんなに私の心臓を鳴らした人っていないもん。そう言うと、彼は「あぁ…もう」と顔を隠した。
何がダメなのか分からなくて頭を傾けている私の顎を掴む。

「なんでそんなに可愛いの？…これ以上ドキドキさせるよ、もう」
『……うん、して』

はぁ、とため息をつくから、「ダメだったのかな」なんて思ったのも束の間。私だって、手を繋ぐ、ハグ、の上くらいもう行きたいよ。私をもっとドキドキさせてくれるんでしょ？

まるで懇願するように、彼の方に向けて顔を上げる。今日もかっこよくて嫌になる。
近づいてきた大きな影に思わず目をつぶってしまう。

「目、開けて。僕のことちゃんと見て。」

そう言われて、出ちゃいそうな心臓を抑えるように目を開けると、柔らかい感触と共に幸せが広がる。すぐに離れてしまったそれに、名残惜しさが広がる。

『…もっと』

と思わず出てしまった私のポツリ、とした言葉。
プチ、とスイッチが切れたような音がする。

「もう、ほんとに、止めないからね」と聞こえた言葉に答える暇もなく、キスの雨が降り注ぐ。
角度を変えて、長く、そしてほんとに「愛してる」とでも言ってるような。
その幸せに耐えきれなくて、彼の背中に回した腕に力を込めながら受け止めた。