Pure Love (ページ39)

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「Aさん、いい事ありました？最近」
「え？」
「んー、表情が大分明るいんで」

作業室でパソコンを弄りながら、私の方を見るハルトくん。このプロジェクトも佳境に入ってきた。

「ちょっと、危ない」
『わ、ごめん考え事してた』

落ちそうになったパソコンを2人がかりで何とかして支える。

『ごめん、ありがと』
「……この距離にいて、何も感じないですか？」
『…え？』
「僕は、ドキドキしてるんですけど」

あ、これって。勘づいてしまった。でも、こういうように距離が近づいてのアプローチって今まであんまり無かった。なぜなら、私が大きな壁を作っているから。
ハルトくんに対しても大きな壁を作るはずだったけど、日本人、という理由で壁が無くなっていた。

『…からかうのは、良くないよ』
「そうやって、何も見せてくれない」
『え？』
「Aさんは全然俺に本心を見せてくれないじゃないですか。せっかく近づけたと思ったのに」
『見せてないというか…なんだろう。でも、接しやすいとは思ってるんだよ？』
「Aさんはきっと、このあとご飯に行きましょうとか、誘ってもダメなんでしょ？」
『ダメとかじゃないけど、この後は予定があるの。ごめんね』
「……はい」

……何が正解だったんだろう。
肘をついて物思いにふける。

「A？」
『わ』
「何考えてた？大分困った様子だったけど」

ジェノさんは私を覗き込んでいる。つぶらな瞳が私をみあげる。

『うーん、でも』
「何？」

ﾌﾟﾙﾙﾙと携帯が鳴るのは私の方。バナーを見ると"ハルト"。ジェノさんは少し緊張した顔をして「出てきな」と言う。

『終わりました』
「…うん」

沈黙を遮るように、「あのさ」と彼から声をかける。

「ハルトくんは…いや、でもいいや、なんでもない」
『さっき悩んでたの。あのね、うーんと……ハルトくんとは何も無くて。どうしたら良いのかなって思ってた』
「はは、Aらしいね。こうして…悩んでた僕が子供みたい。」

安心したかのような顔をしたジェノさんは1呼吸ついた。
その1呼吸の間の表情は、まるで映画みたいで、綺麗で。目を奪われる瞬間だった。