Pure Love (ページ34)

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「オッパ、まだ練習再開しなくていい〜」

え、女の声が聞こえるんだけど。
ガチャ、と開けたと同時に私の目に入ってきたのは何人かのドリームのメンバーに腕を絡める女性の姿。

しかも、これ…見たことあるよね。

「ガウルじゃん」

と言ったダリアの肘を勢いでつく。
他にもドリーム先輩にくっついている女性のメンバーを見るとあれは、IVEだなってのが分かる。

ジェノさんの腕に絡みついて上目づかいで何かをお話している彼女と、彼の姿は見ても羨ましいくらいお似合いで。
私、来る意味なかったね。

ガシャン、と手に持っていた差し入れの為の彼が好きなアメリカーノと、季節のシュークリームは無惨に落ちた。

少し自分でいつもと違う可愛いガーリーな服を着てきた自分が馬鹿みたい。
私を見た彼は、状況を掴めず、驚いた顔をしていた。すぐに彼女の手を振りほどいたのは見えたけど、私が状況を整理できなくて、ダリアとエリの「A！」という声も聞かずにその場から走った。

無我夢中で走って、近くにある自販機の後ろでハァハァと膝を着いて呼吸する。

見たくなかった。彼がああやって女の人に絡まれてる姿を。別に彼がノリノリだった訳では無い。それくらい分かってるけど、でも…嫌だった。

私に優しくしてくれて、私への時間を割いてくれることが当たり前と思ってしまってきていたのがダメだったのかもしれない。

それでも、彼が私に向ける笑顔と、誠実な姿に私は心酔してしまっていた。

こうやってなんで逃げ出すほど彼が嫌なのかなんて、もう分かってしまった。
ジェノさんのことが好きだから。

ケーキを食べてる時にクリームついた私の口元をそっと取ってくれた時にはドキドキしちゃうし、彼と目を合わせた時にたまに真剣な顔をされると苦しくなる。

『今気づきたくなかったのに……』

どうすればいいのか分からない感情が昂って顔が熱い。
呼吸の音と、足音が近づいてくる。

「はぁ、……A」

『来ないで、ください』

見て欲しくないから、顔を隠して精一杯逃げようとするも、「まって」と腕を掴まれてしまう。

『やだ、変な顔してるから』
「なんで？泣いてるの？」
『……やだ、帰りますッ』

ジタバタする私を抑えて彼は言う。

「ごめんね。Aに弁明したい。いい？」
『…ぬん』

帰るはずだったのに、帰れる訳もなく。腕を掴まれたまま彼に連れてかれる。