Pure Love (ページ16)

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やばい、気づかれる。

思ってる時には既に「見えてるよ」という声が聞こえていた。

『えっと…』

JN「また会えたね」

その人は、ニコりと笑う。

辺りを見渡すと今は誰もいない。良かった、誰かに見られてなかった…と思ってる間に、知らぬ間に手首に重さが乗る。
そのまま手首を掴まれて移動していることに気付く。

『ちょっ』

JN「しーっ。気づかれるよ？」

有無を言わさないという素振りに黙ることしか出来なかった。
というか、私がここまで足を運んだんだもん。

連れてかれたのは人気のいない部屋。
こんなところ見た事がない、って感じで私なら見つけそうにない場所。

JN「あそこで待ってたの？」
『待っては…ないです』
JN「僕には待ってたように見えたけど？」
『嘘なのかなって思って』
JN「何が？」

分かってるくせに。

『……次のカムバって言ったのに、そんな素振り全くなかったから…』

JN「じゃあ、Aは待っててくれた？」

『ま、待ってません』

JN「…俺は待ってたよ。それに、カムバックがこんなに被るなんて奇跡なのかっても思った。活動の為に頑張ってるって噂に聞いてたよ」

真剣な表情でこちらを見るジェノさん。
私だけじゃなかったみたい。他のアイドルやら何かに聞いたり根回ししたら連絡だって出来たはずなのに、授賞式の時に聞いたりすれば良かったのにそれをしない所に好感を持ってしまう。

『ジェノさん』

JN「ん？」

『約束、守ってくれてありがとうございます』

一瞬、何のことだろうという顔をしたジェノさんは、パチパチと決して大きすぎない目を開いて閉じて繰り返した。

JN「待ったよ。長かった、ほんとに」

『あの、』

ジェノさんの手に、携帯の番号を渡す。自分が自らこんな事をするなんて、有り得ないことだけど、彼の誠実さに応えたいと思った。

それだけじゃない、彼の優しい笑顔や聡明な考え。何を考えているのだろう、私に向けられたものはどんな気持ちなんだろう、なんて…もっと知りたくなってしまっている。

JN「…！」

驚いたジェノさんは、手元にある小さい紙を何度も見返しながら、
「絶対、すぐに登録するから。あと、……僕達だけの秘密ね」と言って大切そうにその紙を見た。

JN「A」

『は、はい』

JN「僕にはまだ、Aがどんなに悩んで力を入れて努力してきたか全部は分からないけど、お疲れ様とだけは言いたい。お疲れ様」

そう言ってポンポン、とまた私の頭を撫でるのだ。