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「何が飲みたい?」と、聞いてくる風磨くんに、私もキッチンへ向かう。
静かな部屋に響くのは、電気ケトルがお湯を沸かすシュウシュウという音

「紅茶とコーヒーと、……なんか色々ある」

賞味期限は大丈夫だと思うけどって言いながら風磨くんが開けた戸棚には、高そうな紅茶とかココアの缶をはじめ、色々な飲み物が揃っていた

「貰ったりするんだよね、お土産とかで」

何でこんなに沢山あるんだろうっていう疑問は顔に出ていたのか、風磨くんは少しだけ笑みを浮かべるとそう応えた。

「結構、人にあげたりもするんだけど……Aが飲むなら取っとく」

これからを約束するかのような台詞に、私は息を呑む
返事をしないとって口を開くけれど、たた空気が漏れるだけで、

周りに可愛い人がたくさんいるって
好きになっても無理だって
友達くらいがちょうどいいって
あの日、元彼に言われた言葉が頭の中を巡る

「A」

呼ばれた名前に、ゆっくりと顔を上げると、風磨くんの真剣な瞳がパチリと合う

「絶対に不安にさせないとは……言えない」
「……うん」
「でも、もう少し俺のこと信じてほしい」
「……っ、」
「掴んだ手の責任は、ちゃんと取るから」

祈るようなその言葉に、優しく緩められた瞳に
胸の奥がぶわっと湧き立った

やっぱり、私は、彼が

「風磨くん」
「ん?」
「……好き」

溢れ出る気持ちは言葉になってこぼれ落ちた。
この気持ちを伝えるのは2度目なのに、それはまるで初めて伝えたかのような初々しさを持っていて
風磨くんは驚いたように息を吸ったけれど、すぐに口元に手のひらを当てて少しだけ俯いて、「やっとだ」って、くしゃりと顔を綻ばせた。

何が、って聞こうとした唇は上から落ちてきた彼のそれに塞がれる
えっと思った瞬間、一度離されて空気に触れた

私が瞳を瞬かせれば、嬉しそうに目の前の風磨くんは笑って、そんな彼の顔を見たらもう何も言えなくて、今度はゆっくりと近づいてくる唇に、私は静かに瞼を閉じた。

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作者名:しい | 作成日時:2024年2月7日 15時

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