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それからの私たちは特に何か大きく変わるといったこともなく、今までと同じように過ごしていた
元々仲が良くて頻繁に連絡を取っていたし、風磨くんが忙しい時はそれが途絶えるのも変わらずで
だけど、たまに漂う甘い雰囲気には未だに慣れなくて、友達のような恋人のような、ふわふわとした関係を楽しんでいる自分もいる。
そんな日々は穏やかに過ぎていって、夕方には真っ暗だった陽が少しだけ長くなってきた頃、玄関のチャイムが急に鳴った。
日曜日の夕方。
予定のない来客に、宅配便かななんて思いながらモニターを覗き込む。
そこに写り込んだ姿に息を呑んだ
元彼だ。
来ていたメッセージは無視したままで、「気にしちゃうから見えないようにしなよ」って風磨くんに言われるがままブロックした。
それからも彼は、一方的にメッセージを送り続けていたんだろうか
どうしようかと戸惑っている間に、もう一度チャイムが鳴る。
絶対に居留守を決め込んだほうがいいって、そんなこと分かっているのに、
心に残っているのは長年付き合っていた故の情で、迷った私の指はインターフォンの通話ボタンを押してしまった。
「変わらないね」
「まぁ……おかげさまで」
彼が私の家に来たのは、別れを告げられたあの日以来だ
家に上げる気はなく、リビングへ繋がる扉をしっかりと閉めて玄関先に立つ。
「何か返し忘れたものあった?」
「いや、ずっと連絡してるんだけど、返事がないから。」
ブロックされてるとは気づいてないんだろうかって、そんなことを思ったけれど、意外と楽天的だったなって、彼の性格を思い出した。
「A、」
「……ごめんね、やり直す気はない」
真っ直ぐに彼の瞳を見てはっきりと告げる
キッパリと言わなきゃ分からない人だから
だけど、そんな私の言葉を受けても、なお信じられないような表情を彼は向けてくる。
「いや、結婚まで考えた仲なのに?」
「それを、壊したのはそっち」
「ごめん、あの時の俺はどうかしてて」
狼狽える彼の口から出たのは、安っぽいドラマでさえ使わないような言葉
どうしてあんな振り方をして、まだ復縁できるなんて思うんだろうか。その方が信じられない。
「……もしかして、風磨のせい?」
「……え?」
突然出てきた名前に、少しの隙を見せてしまった。
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作者名:しい | 作成日時:2024年2月7日 15時