その恋を頂戴(f.k) (ページ21)

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「覚えてる？」
「なに……」
「俺がずっと、待ってるってこと。」

探るようなその言葉に、空気が止まる。
切なげに揺れた風磨くんの瞳を見ていられなくて、ふと視線を逸らした。

覚えてる。覚えてるけどって、そんな考えが顔に出ていたのか、風磨くんは自嘲するように笑みを落とす

「そろそろハッキリさせちゃいます？」

このままだと登場人物どんどん増えてくでしょ、なんて、茶化すように言うけれど、その表情は真剣だ。

きっと、答えはもう出ていて
元彼がよりを戻したいと言ってきても、後輩に迫られても、頭に浮かぶのは風磨くんのことばかりで

踏み出せていないのは、迷っているのは私
彼は、こんなにも気持ちを伝えてくれているのに、私はいつまでも自分の気持ちに決着をつけることができないまま

「……私」

口を開くと、微かな緊張が走ったのが分かった
高鳴る鼓動を抑え込むように、ぎゅっと手を握る

「……風磨くんが、好き」

ゆっくりと紡いだ言葉に、風磨くんはなぜか少し戸惑ったような表情を見せて、だけどすぐに安心したように、ふっと小さく息を吐いた

「うん、俺も好き」

そう言って至極優しく微笑むから、もう気持ちは限界で、思わず両手で顔を覆ってうずくまる。

「待って、無理。」
「は、何がよ」
「むり。恥ずかしい。今更すぎて」

私達は友達として、数えきれないほどの季節を過ごしてきた。
風磨くんはいつも一歩大人で、手の届かない人で、私なんかが隣に並んじゃダメなんだって思っていたのに

「俺は、ずっと好きだったけどね」

そんなことをサラッと言い放って、私の言葉を待たずに風磨くんは視線を前に戻すと車を出した。
今まで止まっていた窓の外の景色が静かに動き出す

「え、ちょっ、ずっとって」
「それ聞いちゃう？」
「だって」

私が口籠もると、風磨くんは目線を前に向けたまま、照れ隠しのように、ふはっと笑った。